「ビーチバレーをやり始めた当初は、オリンピックで活躍する自分をイメージしていました。海外選手たちに勝っていって、世界ランキングを上げていって…そう考えるとすごく楽しかった。でも楽しく始めたビーチバレーのはずが、どんどん苦しくなっていきました。
3位さえも取れなくなって、26歳の若さで現役を引退
段々と国内ツアーで3位さえも取れなくなって。もちろん私が『浅尾美和』なんですけど、どんどん自分自身が遠い存在になっていきました。イメージしていた自分と現実の自分が一致しなくなって。目標に向かって進めなくなったんです」
そうして引き際を決めた浅尾は2012年、26歳の若さで現役を引退した。
今振り返ると、現役で活躍した期間はわずか8年間に過ぎない。本人が満足のいくプレーをできていた期間で言えば、さらに限定的な間ということになる。
にもかかわらず、多くの人々の記憶には浅尾という選手の記憶が色濃く刻まれている。
その姿も、人気も、華のあるプレーも含め――彼女の存在というのはそれだけエポックメイキングなものだった。
各方面からの過剰なまでの大きな期待を背負い続けながら、一般的にはマイナーと言っていいビーチバレーという競技の知名度を上げた功績は、唯一無二のものだろう。
オリンピックは憧れの場所
一選手としてはオリンピック出場という目標は叶わなかったが、8年間にわたるビーチバレー選手生活を通じて、得たものはあったのだろうか?
「オリンピックという舞台は憧れの場所。私自身もそこを目指すために努力はしてきました。間違いなく“自分は頑張った”ということは言えると思います。それでも叶わなかったので、本当にそこへたどり着くには厳しい道のりだとわかりました。
でも、それは本気で目指したから気づけたことで。その過程があったからこそ、今の自分があると胸を張って言えます。全力を出し切ったけど…私にはオリンピック出場は無理だったから。当時、一緒に戦っていたタケ(西堀)さんや同世代の選手たちは今でも現役でオリンピックを目指しています。だから今は一ファンとして、彼女たちをメッチャ応援していますね」
インタビュー写真=杉山拓也/文藝春秋
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