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「私たちの『被ばくデータ』が同意なしで提供されていた」市職員処分でも謎は残る

福島県伊達市の「被ばくデータ不正提供」問題

2021/03/24

genre : ニュース, 社会

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宮崎氏と市側とのメールでは…

 ちなみに、データ提供前に行われた宮崎氏と市側のやりとりがされていることが明らかになっている。以下は、2014年12月19日付のメールの一部だ。

〈ガラスバッジデータについて〉
・ガラスバッジ単独の結果から学術的な物言いは難しい。理由は「個人個人の持ち方が異なる」ため、正しく所持している人が多くはない以上、得たデータを(学術的に)「個人線量」と言うことが難しい。
・しかし、行政の施策に役立つデータは埋もれている可能性がある。生データの解析を別な角度からやることには意味はあるかもしれない。例えば1mSv刻みでなく全体の分布として見てみる、など。
〈WBCデータとの突合〉
・ガラスバッジとも同様にWBC単独で言えることは少ない。しかし、双方を突合することに意味はある。有意検出者における世帯単位での解析、字単位の場所の評価など。目標は「ガラスバッジ線量とWBC検出値との相関があるやいなや」。
・上記のためには突合可能なデータを早野先生にお渡しすることが不可欠。

早野先生へのデータ受け渡しは、手続き上はいろいろあるかもしれませんが、総論的にこの方向でよろしければ、半澤さん、裁量でフライングいただくことは可能でしょうか・・・(早野先生、やはり、年末年始にお時間が多少あく、とのことで・・・)。

 また、12月29日付メールでも、以下のように宮崎氏は催促している。

みなさま
すでに年末で仕事納め後とは思いますが・・・早野先生へのデータ提供の件、いかがだったでしょうか?短文でもいいので、ご連絡いただけますと・・・スミマセン・・・。

 このメールの返信については、明らかにされていない。

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「データの提供は、市長からの指示という認識です」

「開示請求でも『不存在』となっていました。当時の直轄理事兼放射能対策政策監の半沢隆宏氏が退職したときにアカウントを消したために、メールもなくなったという説明でした」(島さん)

伊達市役所前のモニタリングポスト

 こうした経緯の中で、宮崎氏と早野氏による2つの論文が、2016年と17年、イギリスの専門誌「Journal of Radiological Protection」に掲載された。この論文に疑問を持った一人が島さんだった。2017年4月、島さんたちは論文を検証し、提供したデータや論文に関する公文書開示請求を行なった。最終的に論文は撤回された。この論文で宮崎氏が博士号を取得していたが、福島県立医大は学位を取り消した。

 ただ市の調査委からの聞き取りで、半沢氏は、「データの提供は、市長からの指示という認識です」と回答しているが、「論文のために提供はしていない」と回答している。