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職員が研究者にデータを渡している

 市の調査委の報告を受けて、2020年9月24日、特別委は中間報告を出した。そこで「調査の中で宮崎早野論文について同意した市民は、一人もいなかったことが判明した」としている。つまり、市民が同意していたのは健康管理のためである、と結論付けている。しかも「ガラスバッジは亡失すると弁償させられるので、大切に自宅内に下げていた方々が多数を占めていた。従って、解析結果の積算線量は、ほぼ自宅内の線量」として、「このデータ並びにこの論文は活用すべきではない」とした。

 島さんは取材に対して、こう話す。

「ことの経緯を調べて、どのようにして論文が書かれたのかを知らなければ、問題がわかりません。市議会では、市職員と研究者のメールのやりとりがきちんと調べられていました。ただのデータの不備ではないのです。市の関係者にも聞いていますが、よくわからないまま、職員が研究者にデータを渡しているのです。それが大きな問題です。誰からの指示があって提供したのか、はっきりしないままです」

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原発事故当初は政府を信頼し、避難をしなかった島さん

 市議会特別委では、これまで未解明だった部分について、当時の市長・仁志田昇司氏や、当時の直轄理事兼放射能対策政策監の半沢氏、宮崎氏、早野氏らの関係者に質問状を郵送した。しかし、期限内までに回答がなく、解明できなかった、とした。一方で、関係した職員を処分する方針が示された。

「“職員がかわいそう”という声も聞こえます。しかし、誰がそうした指示をしたのでしょうか。これでは尻拭いではないでしょうか。あまりにも理不尽です。そのため、特別委には、どうして処分されたのかを明記してほしかったのですが、最終報告には、ありませんでした」(島さん)

 市の調査委では、再発防止について触れているが、職員個人の個人情報の管理の問題とされているが、指揮命令系統がどのようになっていたのかが明らかになってない。市議会特別委の最終報告では再発防止に触れていない。

 市は3月19日、関係した職員2人を、行政情報や個人情報の取り扱いが不適切であったとして、減給より軽く、訓告よりは重い戒告処分とした。「市としては第三者委員会の報告を踏まえつつも、市議会特別委の判断を待っていた。しかし、新たな事実がなかった。また、上司だった直轄理事と参事の2人については、すでに退職しているため、処分の対象外であり、審議していない」(市人事課)としている。

 一方、「市民生活環境を考える会」では、個人情報の漏洩や個人情報が入っているCD-Rの紛失について、当事者の市民や元市民に対して説明を怠っているとして、市長や議長に対して要望書を提出することになっている。

写真=渋井哲也