「厚労省は問題を解決する気がないのでは」
「ファーウェイ側は問題が発覚した直後から厚労省に対して技術的な解決策を提示しているが、厚労省側からは今までのところ何の回答も得られていません」
こう明かしたファーウェイの関係者は、厚労省側の無策ぶりについて、さらにこう糾弾する。
「タイミングが悪いことに、この問題が明らかになった後の3月、通信アプリ『LINE』の利用者の個人情報が中国の関連会社からアクセス可能な状態になっているという問題が新聞報道で明るみに出ました。この件で、かねてから中国韓国に忌避感を抱いている層からの風当たりがさらに強まった感はありますが、そもそも暗号化されたデータは厚労省で管理しており、個人情報漏れの懸念が技術的に存在しないことは明白です。そのあたりの事情は、厚労省がきちんとアナウンスすればいいだけの話なのですが、そうした対策を取る気配もない。問題を解決する気がないのでは、と疑わざるを得ない状況です」
厄介なのは、このトラブルが、国内だけの問題に留まらない点だ。ファーウェイ社のスマホは、昨年、世界シェアで1位に躍り出るなど、国内外に多くのユーザーを抱えている。
さらに、COCOAのアプリをダウンロードするためには、アンドロイド端末に標準装備されている米IT大手「Google(グーグル)」が提供するアプリストア「Google Play(グーグル・プレイ)」が必要となるのだが、中国国内はグーグルのサービスエリアから外れているため、ファーウェイ社のみならず、小米科技(シャオミ)など中国メーカーのスマホは軒並みアプリを使えないという事態に直面するというのだ。
ファーウェイ側が解決策提示も厚労省側からは「なしのつぶて」
ただ、前出のファーウェイ関係者によると、ファーウェイ側はすでに同社の端末だけでなく、中国の他のメーカーのスマホでも汎用できる解決策を厚労省に提示しているが、いまだに厚労省側からは「なしのつぶて」の状態が続いているのだという。
この問題を取り上げた国民民主党の玉木氏は、菅首相にこうも問いかけている。
「中国ではシェア4割を占めるファーウェイ社のスマホにCOCOAがインストールできない現状を放置したままでは、安全なオリンピックの開催などできないのではないですか」
一連の問題について、厚労省は文春オンライン編集部の取材に対して、「スマートフォン端末メーカーとは必要に応じて意見交換を行っておりますが、個別の企業との具体的なやりとりについては回答を控えさせていただきます」「我が国において2019年以前に発売された同社(ファーウェイ社)端末では、現時点でも接触確認アプリをご利用いただくことができます」と回答した。
あらわになった怠慢行政の弊害。新型コロナの変異株という新たな脅威も迫るなか、逆風にさらされる「五輪の火」は、いよいよ頼りなげに細く小さく揺らいでいる。