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 一方で、ビジネスとしてみれば、「売り上げを立てないと困る」という状況も起こりえます。開発者が納得できず、本音ではもう少しクオリティーをアップするために発売の延期を願っても、会社の経営状況を見て発売せざるを得ない……なんて事態もないわけではありません。

 この点、任天堂は開発期間を長く取り、かつテストプレーをしっかりして、必要とあれば大幅な発売の延期をします。さらに代表取締役フェローである宮本茂氏の厳しい管理によって、疑問があればソフトを作り直すことさえあります。

 さらに、世界のどの国でも、性別や世代を問わず売れるようにと、ゲームの内容にも配慮を重ねます。海外で売れれば大きな収益が得られますが、そのぶん開発する側にも制約があり負担がかかります。それでも「世界各国の幅広い層の人々へ作る」という考えは徹底しています。

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「マリカー」「あつ森」に見る任天堂の“さじ加減”

「マリオカート」を例にとれば、そもそも自動車ではなくカートを題材にしているのも絶妙です。どちらかといえば男性ゲーマー寄りなテーマですが、自動車にすればリアル志向になりがちなところを、カートであればより「柔らかい」イメージが働きます。自動車が題材になった「カーレース」であれば失敗=事故ですが、カートならそうではありません。子供たちにも触れやすく、一発逆転を含めてゲーム的なギミック(仕掛け)を用意し、キャラによって性能差をつけて、かつ、友達と一緒にプレーして楽しい要素もあります。

あつまれどうぶつの森HPより
あつまれどうぶつの森HPより

 対して「あつ森」はゲームオーバーも勝ち負けもなく、ゲームアクション的な要素は薄めです。そしてファッション的なこだわりがあり、コツコツ楽しみたい人にはたまらない魅力があります。男性ゲーマーだけでなく女性ゲーマーもずっと遊びこむようなテーマをうまくすくっています。2つの大ヒットソフトは、幅広い層に遊んでもらうというポイントは外さず、それでいて嗜好をくすぐるポイントが違うのです。