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2022/03/27

―作品賞に入ってない。

町山 だって、アメリカ以外の人にとって、全米ヒットは関係ないですもん。つまり、『パラサイト』が作品賞を獲ったということは、アメリカの映画労働組合の賞だったアカデミー賞が世界の映画賞になったということで。アメリカのヒット作でお祭りをするというアカデミー本来の独自性がなくなってしまったんです。

一昨年の作品賞、監督賞『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督。©Adriana M. Barraza/WENN/共同通信イメージズ

実はアート系作品のほうが、多様性に乏しい

―難しい局面ですね。

町山 あと、今年から作品賞の候補作について設けられた新しいレギュレーションがありまして。それは、女性やLGBT、アジア・アフリカ系や外国人などが、主要な出演者に入っているか、スタッフに入っているか、映画の題材になっているか、それらがどの程度の割合なのか、そういった細かい条件をつけたんです。これはやっぱり、アカデミーが労働組合の賞であることと関係していて、雇用の改善や均等化をハリウッドは推し進める、それをアカデミーは後押しする、という動きなんです。

 ただ、実は、アート系作品ほど関わる人数が少なく小さな話だったりするので多様性に乏しく、娯楽大作のほうが出演者もスタッフもストーリーも多様性に富んでいる。というのも、アメリカの白人の割合は60%を切り、多様性がないとお客さんが入らない。だから、アカデミーが目指すダイバーシティは娯楽映画にあるはずで。

『ドライブ・マイ・カー』
舞台俳優兼演出家の家福(西島秀俊)はある日突然、妻を亡くす。2年後、演劇祭で演出を担当することになった家福は、口数の少ない専属ドライバー(三浦透子)と出会う。全国超ロングラン上映中。©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

―そういう意味でいうと、『ドライブ・マイ・カー』は多様性がありますよね。日本人、中国人、韓国人、フィリピン人、ろう者などが多言語で演劇をする話で。

町山 僕は、コミュニケーションの物語にしているところがうまいと思いました。アカデミーが目指すテーマにも合致すると思います。

※続きは発売中の『週刊文春WOMAN vol.13(2022年 春号)』にて掲載。

まちやまともひろ/1962年東京生まれ。洋泉社にて『映画秘宝』を創刊。
97年にアメリカに移住し、カリフォルニア州バークレー在住。
著書に『アメリカ人の4人に1人はトランプが大統領だと信じている』(文藝春秋)など。

※2022/03/31 17:43……『ドライブ・マイ・カー』国際長編映画賞受賞を受け、リードを変更しました。

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