仲正 私は大学に入学した1981年から約11年半、統一教会の信者でした。元信者としての感覚からすると、なぜ安倍元首相が標的になったのか、いまひとつ腑に落ちないんですよ。怨念の対象は政治家ではなく統一教会の人間に向かうのが筋だろう、と。テレビのインタビューで「安倍元首相は身内のようなものだった」と言う2世信者の方もいますが、これはメディアに誘導された発言のように感じられます。統一教会の教義に照らせば、安倍元首相も「堕落した人間」のひとりに過ぎず、決して教会の身内とは言えません。
このように考えると、まだ解明されていない謎は多くあると思っています。
「創価学会・公明党は嵐が通り過ぎるのを待っている」
宮崎 自民党を中心に、国会議員と統一教会の関係が次々と明らかになっています。岸信夫・前防衛大臣や二之湯智・前国家公安委員長が内閣改造で外された後も、例えば山際大志郎・経済再生担当大臣や萩生田光一・政調会長の、教団との「濃厚な」つきあいが指摘されている。統一教会問題の処理の不首尾は、政権を揺るがす大問題に発展しています。
一方、創価学会・公明党はこの事態を前に、首をすくめて嵐が通り過ぎるのを待っているような状態です。
なぜ政治と宗教は癒着するのか? 統一教会は何故政治に接近したのですか?
仲正 政治家たちが最も期待しているのは、やはり選挙の際の支援だと思います。統一教会は創価学会などと比べると規模は小さいですが、信者たちはみな従順でよく働きます。派遣される信者たちは、選挙応援ぐらい軽くこなしますよ。普段から従事している布教活動や徹夜祈祷、「万物復帰」と呼ばれる物品販売の方が、よっぽどきつい(笑)。私も信者時代、万物復帰がうまくいかずに「売れるまで帰ってくるな!」とよく叱られていました。信者たちにとっては選挙支援なんて、むしろ休みをもらったぐらいの感覚なんです。
「実際の信者数は公称数とは相当な開きが」
宮崎 現在の日本国内の統一教会の信者数は?
島田 公称では56万人とされていますが……仲正さんの実感としてはどうですか?
仲正 実態よりはかなり多い印象です。私が信者だった1980年代でさえ、アクティブなメンバーは2万人もいないだろうと言われていました。その後、霊感商法が問題化した後、信者数は相当減ったはずです。
統一教会の中では、信仰歴が長く、ホームと呼ばれる拠点に専従する信者のことを献身者と呼んでいました。献身者は、イベントや選挙に呼ばれたら必ず参加します。また、それに準ずる信者を合わせて、2万人ほどだと。それ以外にも、自分の仕事を持ちながら礼拝などに定期的に通う一般信者がいます。そうした信者を合わせても、せいぜい6万~10万人の間が妥当なところでしょう。
宮崎 公称とは相当な開きがありますね。ただ、政治家を取材してみると、数としてはそれほどではなくても、宗教団体からの票の支援は非常に固く確実であるため、「とても安心感がある」と口を揃えていいますね。