「新開地」とは、字面そのままに意味を取れば、“新しく開けた土地”ということになる。実際に辞書を引いてもその通りに書いてあるし、かつては新たに開墾されたり開発された土地を指して新開地と呼ぶことは普通にあったようだ。
が、そんな数ある新開地においても、それをそのまま地名にいただいて圧倒的な知名度を誇っているのが兵庫県は神戸市にある新開地、である。
「新開地」には何がある?
そもそも、神戸の新開地は阪急電車の終着駅として名高い。梅田を出発した阪急神戸線の列車の行き先は、ざっと大別すれば各駅停車の普通が神戸三宮ゆき、そしていくつも駅をすっ飛ばす特急が新開地ゆきなのだ。つまり、阪神間の移動は阪急電車で、というポリシーの人は、「新開地」という駅名にはよくよく慣れ親しんでいるということになる。
もちろん、だからといって皆が皆新開地駅で降りたことがあるかどうかは別のお話。神戸市内における最大のターミナルは言うまでもなく三宮なのだから、多くの人は神戸三宮駅で降りてしまうだろう。となれば、新開地駅はやはりナゾの終着駅。新しく開けた地を意味するその名もまた、いっそう謎めいた雰囲気を醸し出す。いったい、新開地駅とはどんな駅なのだろうか。
……などというわけで、かような疑問を抱いた編集氏の強いプッシュもあって、はるばる新開地駅までやってきた。改めて復習すると、新開地駅までは東京からならば新幹線で新神戸駅まで行って地下鉄で三宮、そこから阪急電車に乗り換えて、となる。大阪からは梅田から阪急電車の特急に乗って35分。三宮のちょっと行った先の地下に潜ったところに新開地駅はある。
神戸高速線の中核的なターミナル「新開地」
ここで最初にややこしい話を済ませておくと、新開地駅は阪急神戸線ではなくそれが直通している先の神戸高速線の駅のひとつ。
この神戸高速線というのは、阪急だけでなく阪神電車・山陽電鉄・神戸電鉄を含めて4路線が神戸市中心部の地下で人知れず入り組み絡み合っている路線で、とくに高速神戸・新開地のふたつの駅は阪急も阪神も揃って乗り入れてくる。さらに新開地駅は六甲山地の山越えに挑む神戸電鉄の事実上の起点になっていて、ますますややこしさが加速する。
まあ、このあたりの詳しいところはいくら言葉を尽くしても伝わりにくいので、実際に乗ってみて実感していただくのがいいのだろうと思う。