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小田急線“ナゾの阿波おどりの駅”「大和」には何がある?

2023/01/30

genre : ライフ, , 歴史, 社会

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外に出てみると…

 外に出てみると、十字の交差の四隅それぞれに、ちょっとした駅前広場が設けられている。本来なら相鉄線は地下に潜っているので、駅前から眺める限りは高架の小田急線しか存在しない。だが、ちょうど相鉄線の線路が通っているあたりの地上部分は遊歩道のように整備されていて一目瞭然なので、なんとなく十字に交差しているということが伝わってくるのだ。

 相鉄線が地下に潜ったのは、1993年のことだ。それより前は、ちゃんと地上を走っていた。ただ、地上を走る線路とその上を跨ぐ高架線という十字交差は、町を4つに分割してしまう。回遊性はとうぜん阻害されてしまうし、踏切は渋滞の要因にもなる。ということで、相鉄線を地上から地下に潜らせる工事を行った。そして地上の線路の跡地が遊歩道のように整備されたというわけだ。

「大和」の中心はどこ?

 そうした事情からなのか、大和という駅はいったいどこが中心なのかがいまひとつわかりにくい。東側には「プロス」という駅ビルがあってこれが旗印にはなっているようだが、西側にもそれぞれ駅前広場があり、商業施設も十字の四隅を中心に同じように広がっているのだ。

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 さらに、小田急の高架下にも商業施設が入る。いかにも古めかしい、昭和30年代の面影の商店街もあれば、賑やかしいイマドキの商店街もあり、ビジネスホテルもファミレスも。間々には新しめのマンションが建ち、さらにその周縁には戸建て住宅がひしめく住宅地だ。

 西側(つまり「プロス」とは反対側)の駅前は、「大和なでしこ広場」と名付けられている。大和なでしこってことですか……と思って調べてみたら、大和は女子サッカーが盛んなのだとか。2011年のサッカー女子W杯で優勝したメンバーにも大和出身の選手が何人かいる。そうした縁もあって、「なでしこ広場」となったのだろう。

 

 他にも「あすろーど」「ふれあう街昭和通り」など、駅の周りの商店街や道筋には、色とりどりの名がつけられている。もともとは周囲の商店街、十字に交わる線路で4分割されていたわけで、それが中央の遊歩道や駅ビルを中心に一体化された。とはいえ、4分割されていた頃の面影というべきか、どことなく雰囲気が違うのもまた歩いていておもしろい。