いわゆる「バブル世代」とは、日本が空前の好景気にわいた1980年代後半から90年代初めにかけて就職活動し、入社した世代の人たちを指す。当時は超売り手市場で、企業が学生を囲い込むためにラスベガス旅行に連れて行くなど、今では考えられない逸話が多く残る。しかし、「バブル世代が良かったのは、就職活動時と入社してからのほんの数年だけで、今は会社内で非常に分が悪い」と、著者の相原さんは言う。
人員が非常に多いため、役職につけない人も多い。つけたとしても部下のいない名ばかりの「スタッフ管理職」だったり、一定年齢に達したらポストを返上する「役職定年」があったりする。これらの事情がなかなか他の世代からは理解されず、「景気のいい時に大量採用されて平均的な能力が低い」などと見られがちだ。
「私自身、バブル世代ですが、この本を書くきっかけになったのは、大学の同窓会に行ったこと。新卒で入社した企業にずっと勤めている同級生たちが非常に元気がなく、ともすれば投げやりに見えたんです。この実情をどうしても伝えたい、書かねばならないと思いました。この本は、同世代への応援歌のつもりなんです」
その言葉どおり本書には、バブル世代の会社での現状分析はもちろん、世代に共通する特徴、他の世代との違いや軋轢、そして会社員生活の最後の10年をどう過ごせばいいかという提案までが書かれている。
「バブル世代の強みは、若い時に景気の良い時代を過ごしたゆえの『根拠のない自信』。変に明るくて人付き合いがいいのもプラスでしょう(笑)。反面、消費性向が高く見栄っ張りなところがありますが、それはマイナスにしかならない。これからは自らの棚卸しをして、自分にどんな生き方ができるのか、じっくりと考えて頂きたいと思います」
相原さんは「企業に30年も勤めれば、相当な蓄積があるはず」と言う。
「スーパーリーダーになれなくても、自分の得意な分野を生かすマイスター的な生き方もあるし、人柄を生かして後進を指導する、なごみ系の生き方もあります。
社内にそのようなポストがなければ、いっそ転職してしまうのも一つの手。転職すると普通、会社はサイズダウンします。しかし人は頼りにされたいもの。給料が下がっても活躍の場があるというのが、生きていく上では大事だと思います」
バブル世代が最後に豊かな会社員生活を送るための、必読の書だ。
『バブル入社組の憂鬱』
バブル期の大量採用世代も、今やアラフィフ。見栄張りで、なぜか楽観的で、やたら暑苦しい彼らは、現在どんな状況にあるのか。社内の評判が悪い理由、バブルvs.氷河期の構造、世代特有の強みと弱みなど、現実を直視し、今後バブル入社組が生きる道を、同世代の人事・組織コンサルタントが多くの事例から考える。