“14歳、中学3年生で甘いもの好き”の女の子に群がる200人
2021年11月4日、NHK総合テレビはクローズアップ現代「追跡・SNS性犯罪~ネット上で狙われる子どもたち」を放送した。
取材班は、少女をインターネットのSNSを通じて「グルーミング」しようとする男たちの生態を描いたチェコのドキュメンタリー映画「SNS―少女たちの10日間―」を参考にして、同じようにネット上に架空の子どものアカウントを設定した。設定は“14歳、中学3年生で甘いもの好き”の女の子。調査を合法的に行うために弁護士らの助言を得ながら進めた。
「友だちがほしい」とつぶやくと、わずか2分で12人からメッセージが送られてきた。その後、2か月で200人近くの人物がメッセージを送ってきた。
子どもたちを手なずける手口には、心を許してしまいかねないようなものがあった。
メッセージを送ってきた自称「一人息子がいるという40代の男性」。性的なことは一切書かずに「応援するよ」「落ち込まないで」などと“気遣う”言葉が続いた。
「受験生なんだね」「勉強の邪魔にならないかな?」
自分も「甘いものが好き」だと、少女のプロフィールとの共通点を提示する。メッセージはほぼ毎日送られてくるようになった。「お疲れさま」「ありがとう」「いましんどいから聞いてくれて助かったよ」など、当事者の子どもが心を開きそうな言葉でやりとりする。
安心感が芽生えた頃に「ストレスが溜まる」などとつぶやくと、「やわらげる方法がある」と男性が示してきた。「エッチは気持ちいいってこと知っている?」「いやらしくないんだよ」などと性行為を求めるメッセージに変わっていく。
子どもが「疑問を持ちにくくなり、性的要求を受け入れてしまう」
この番組制作に協力したNPO法人「ぱっぷす」の相談員・後藤稚菜さんは「(一度信頼した)そういう相手から性的なことを求められて、畳みかけられて、理詰めにされたら、やっぱり嫌われたくないとか、いままでの気遣ってくれた関係性とかもなくなってしまうのかと思うと、やっぱり断れなくなってしまう」と少女たちの心理を説明する。
実際にそうした性被害にあった女性Aさんに話を聞くと、中学2年だった14歳の時に「かわいい」などと容姿を褒めるメッセージが男性から頻繁に届き、「会いたい」と求めてきたという。実際に会うとカラオケボックスで同意なく性行為をさせられ、性暴力の被害を経験した。
Aさんは10年経った今も、この日のトラウマの幻覚や幻聴などに悩まされ続けて服薬している。だが「会いに行った自分が悪い」と自らを責めている。
「その相手の男性をものすごく憎んでいるとか、それを思ってしまったら、全部その人の悪意だったと思ってしまって、自分を否定してしまう気がして、全部犯罪って思いたくないと当時は思っていた」と行為を正当化しようとした心理を語る。
グルーミング被害に詳しい弁護士の川本瑞紀さんは、グルーミングによる性犯罪の手口の共通点として「みんなすごくやさしい」「受容的で」「無条件で肯定してくれる」「共感してくれる」と説明する。