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5年生存率2割、“ステージ4の直腸ガン”を宣告された漫画家は「怪しげなクリニックに行って…」

漫画家・ガンプさんインタビュー #1

2023/06/30
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地を這うような日常を描かなければ、闘病漫画としては偽物

――私もガンになってからいろんな方の闘病記を興味深く読むようになったんですけど、ガンプさんの作品はキラキラ感がまったくないといいますか、地を這うような患者の日常があって共感しました。

ガンプ さっきの話になりますけど、ガン専門医は忙しいから、診察して薬を処方して、「じゃあ半年後」みたいな感じなんですよね。でも、患者にとっての本番って医者に会ってない間の半年間じゃないですか。

――抗ガン剤でつらい、苦しい時間は医者に会ってない間の時間ですよね。

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ガンプ どうしても僕には、患者が戦ってきた3ヶ月なり半年なりが医者には見えていない感じがして。まあ、受け持ち患者全員の苦しみを背負ってたら医者の身が持たないということもわかるんですけどね。

 お医者さんは診察の場が“本番”で、僕たちにとっての“本番”は日常だという気持ちがあったので、そこを描かないと闘病漫画としては偽物になってしまうと思っていました。

――ガン患者の日常って、すごく淡々としていますよね。

ガンプ 今日も抗ガン剤飲んで、明日も飲んで、明後日も飲んで……まだ飲まなきゃいけないという「いつまで続くんだ、これ」のつらさですよね。薬なのにどんどん体調が悪くなっていくし。

浮ついた楽観論みたいに思えた励ましの声

――作品の中に「誰かの呪いの言葉は、他の誰かにとっては救いの言葉になる」という言葉がありましたが、ガンプさんが抗ガン剤で苦しむ中で吐き出す「チキショウ」「バカヤロウ」に共感しました。

ガンプ Twitterでガンを公表したんですけど、その時に「また連載の続きを待っています」みたいな励ましのコメントがたくさんついたんです。ただ、正直その時の自分って、オキサリプラチンっていう抗ガン剤の影響で点滴を入れた左腕がボロボロになっていて。

――抗ガン剤による血管痛で手が使えなくなるんじゃないかという恐怖はありますよね。

ガンプ 漫画を描く右手を守るつもりで左腕ばっかりに点滴してたんですけど、それも限界でいよいよ右腕に、という状況だったので、励ましの声も浮ついた楽観論みたいに思えてしまって。

 苦しみを知らない他人がひゅっと引用リツイートで「つらい時はつらいって言っていいんだよ」みたいな声がけをしていくSNSの空間に猜疑心があったんです。(#2に続く)

5年生存率2割、“ステージ4の直腸ガン”を宣告された漫画家は「怪しげなクリニックに行って…」

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