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 増加が目立つのが、情報・通信である。楽天グループは2020年から上位10社に入るようになり、2020年7位(27人)、2021年4位(32人)、2022年3位(44人)と上がっている。先に触れたように、学部生では2021年から連続1位だ。ソフトバンクとヤフーも2020年あたりから上位に入ってくるようになった。ソフトバンクは2020年20位(18人)、2021年10位(23人)、2022年6位(34人)と順位も就職者数も伸びている。2022年は20位にファーウェイ、2021年は10位にアマゾン ウェブ サービス ジャパン、25位にアマゾンジャパンと外資系の情報・通信会社が入っているのも変化を表している。

 金融・保険は、業種別の就職者数では最多を維持しているが、メガバンクを中心に数は減っている。2007年は、1位みずほフィナンシャルグループ(82人)、3位大和証券グループ(38人)、6位野村證券(32人)、8位に三井住友銀行と三菱東京UFJ銀行(各27人)と、上位10社のうち5社を占めていた。しかし、2022年では上位10社にはどこも入っておらず、11位三菱UFJ銀行(25人)が最上位になっている。

変わる進路、変わる価値観

 製造業は、就職者数が減っている。2007年は上位20社に、2位日立製作所、5位東芝、7位トヨタ自動車、12位に三菱重工業と富士通、15位キヤノン、17位ソニー、20位NECの8社が入っていたが、2022年は2位ソニーグループ、5位日立製作所、9位富士通、14位の中外製薬と富士フイルムの5社に減っている。

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 製造業が復活するかどうかは、日本経済の行方を左右する。キャディの加藤CEOが言うように、「トップクラスの学生が行きたい産業に製造業が位置できるようになること」ができるかどうか、そのために生産性を上げられるかどうかが重要になる。

 東大生の目指す進路や意識が変わってきたのは、日本社会や経済の環境の変化が背景にあるのだろう。就職先のランキング上位には、まだ規模が小さいスタートアップは出てこない。しかし、最近の東大生はスタートアップのインターンに参加することが普通になり、そのまま就職したり、有名企業に就職しても数年で退職してスタートアップに移ったりする卒業生が出てきている。東大で長年、起業家教育を担ってきた各務茂夫・東大大学院工学系研究科教授は「学生たちの周りに東大関連スタートアップがたくさんあるので、スタートアップとかベンチャーとか言っても、学生は驚かなくなっている」と言う。東大生や卒業生の価値観がこの10年余りの間に大きく変化していることは間違いない。(#2に続く)