揺らぐ「エリートコース」、官僚志望は激減
続いて、官僚志望者が受ける国家公務員総合職試験(春)の合格者数の推移を見てみた。
1990年代前半まで東大は毎年500人前後の合格者を出していた。90年代後半に400人を下回った時期があったが、2002年から増加し、2000年代前半には500人近くまで戻った。以後、漸減しながらも2016年まで400人台半ば~前半の合格者数を維持していたが、2017年以降は急激に減少している。
電通の過労死事件(2015年)をきっかけに、長時間労働が社会的な問題になるなかで、官僚が国会対応などに追われて深夜まで働いていることや、人事や政策が官邸主導になり、官僚の裁量権が減ったことなどで、学生にとって魅力が減っているようだ。かつてのような天下りが規制されるようになったこともある。
東大生に取材すると、今も「入学時は官僚になろうと思っていた」「官僚になって国を動かしたいと思っていた」という学生は少なくない。ただ、学生団体や地域おこしなど様々な活動をしたり、卒業生から官僚の実情を聞いたりしていくなかで、別のことに興味を持ったり、官僚への志望が薄まっていったりするケースもあるようだ(これは次の第1章を読んでいただきたい)。伝統的に官僚志望が多かった法学部の4年生たちに聞くと、「官僚志望は少なく、法学部の2~3割くらい。法曹志望が3割くらいでは」と言う。
就職先上位5社15年間の変遷
近年、東大生に人気なのは、外資系コンサルである。2022年の大学院生を含めた就職先では、1位のアクセンチュア(53人)のほか、4位マッキンゼー・アンド・カンパニー(40人)、6位PwCコンサルティング(34人)、25位EYストラテジー・アンド・コンサルティング(15人)が上位に入っている。
2021年は上位10社のうち、1位アクセンチュア、6位PwCコンサルティング、7位マッキンゼー・アンド・カンパニー、8位デロイト トーマツ コンサルティングと外資系コンサルが4社を占めている。
総合商社は以前から人気が高く、毎年、三菱商事、三井物産、住友商事などが就職先の上位に入っている。ただ、2016年以降は大学院生を含めた就職者数で上位10社に入らなくなった。三菱商事は、2011年は1位(41人)、2012年(39人)と2015年(37人)はともに2位だったが、2022年は16位(21人)に下がっている。外資系コンサルに流れている面があるようだ。
外資系コンサルの人気の背景には、仕事は激務でも自分の成長を感じられることや、高い目線で業界を見られること、給与水準の高さや人脈が広がることなどがあるようだ。コンサルの仕事をステップに、起業やキャリアアップを目指す学生も少なくない。時間をかけてじっくりと優秀な社員を育てる日本型の総合商社とは、人材育成で異なる点がある。キャディの加藤CEOのなかで出てきた、東大生にとって「格好いい」業種が近年はここにあると言えるだろう。