教育・大学問題に詳しい中村正史氏によると、かつては卒業後の進路として花形だった官僚志望者が激減するなど、東大生の就職価値観に変化が見受けられるという。いったい彼らは、卒業後にどのような進路を選択するようになったのか。
ここでは、中村氏の著書『東大生のジレンマ エリートと最高学府の変容』(光文社新書)の一部を抜粋し、さまざまなデータをもとに、東大生の変化を読み解く。(全2回の1回目/続きを読む)
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就職先1位はアクセンチュア、学部生は楽天グループへ
かつては4年で学部をストレートに卒業して、官僚や伝統的な大企業を目指していた東大生の進路は、どう変化しているのだろうか。この20年間の国家公務員総合職(旧Ⅰ種)試験の合格者数や、業種別の就職者数、2000年代半ば以降の就職先の推移を調べてみた。
東大の学部卒業生は毎年約3000人。工学部は7割近くが、理学部は8割以上が大学院に進学するなど、理系を中心に進学者が多く、学部を卒業して就職するのは3分の1程度の1000~1100人である。
就職先から見てみよう(出典は東京大学新聞)。例えば2007年の大学院生を含めた就職先の1位は、みずほフィナンシャルグループ。以下、2位日立製作所、3位大和証券グループ、4位NTTデータ、5位東芝、6位野村證券、7位トヨタ自動車、8位に同数で三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)、東京電力が続いている。当時は、銀行や証券会社、重電や自動車メーカーが人気だった。
これが2022年には、1位が外資系コンサルのアクセンチュアになる。以下、2位ソニーグループ、3位楽天グループ、4位マッキンゼー・アンド・カンパニー、5位日立製作所、6位に同数でソフトバンク、野村総合研究所、PwCコンサルティング、9位にヤフーと富士通が続いている。アクセンチュアは2018年にトップになって以降、2019年の2位を除いて首位が続いている。
学部生に限れば、トップは2年連続で楽天グループである。以下、2位マッキンゼー・アンド・カンパニー、3位三菱UFJ銀行、4位PwCコンサルティング、5位に三菱商事と三井住友銀行が続く。外資系コンサルやIT関連企業が上位に躍進しているのがわかる。一昔前の卒業生からすれば、全く意外な結果ではないだろうか。
20年前、業種別の進路で最も多かったのは公務員
次に、東大の公表データを遡り、学部卒業生の業種別の進路を調べてみた。20年前の2003年卒業生では、最も多いのは公務員(196人)で、就職者の18%を占めていた。金融・保険(183人)、サービス(162人)、情報・通信(157人)と続いている。
公務員は、2004年の学部卒就職者の20%を占めた。しかし、2005年に金融・保険が上回ると、以降、業種別では一貫して最も多くなる。公務員は、2022年卒業生では12%まで下がっている。業種別で増えているのが情報・通信で、2022年は公務員を上回り、金融・保険に次いで多くなった。製造業も2018年あたりから減少傾向にある。