音声データから判明したこと
冒頭でA氏が、西氏の認知症が進み、要介護3の認定を受けている現状などを説明。そのうえで「後見人をどうするのか」と質問すると、馬場氏は次のように応じた。
「西先生、プライベートの部分については、うちのほうできちっと、個人の財産とかも管理させて頂いています。それについては、西先生から一筆頂いて、やらせて頂いているんで。(略)西先生の今の状況では、成年後見人制度とかを使って、やるということはそぐわないということで」
成年後見制度は、判断能力に支障のある人物の財産管理や福祉施設との契約などを、家裁が選任する法定後見人や、本人が選任する任意後見人が代理して行うもの。馬場氏は西氏の個人および法人の資産を自身の事務所で管理していると認めたうえで、なぜか成年後見制度などの公的な枠組みを利用することはそぐわないと主張したのだ。
それに加えて、弁護士の質問に対し、秘書が、西氏の死後に個人財産(土地を含む)を法人に寄付するとする自筆証書遺言を作成した旨も回答。この遺言の作成時期について問われると、馬場氏は「3年くらい前ちゃう?」、秘書も「3年くらい前ですね。それは、当時の西理事長から、ちょっと物忘れが激しくなったりとかし始めた時に。ちょっと私、おかしくなる時があるんや、というご意見があって」などと応じた。
すなわち、馬場氏らは、A氏が3年前の時点で「物忘れが激しい」などの認知症が疑われる初期症状が出ていることを把握しながら、成年後見制度などの公的な枠組みを避け、A氏に自筆証書遺言を書かせたり、任意の財産管理契約をさせたりしていたことを認めたことになる。
厚労省認定認知症サポート医で金町駅前脳神経内科の内野勝行医師が言う。
「短い時間の記憶が無くなるなど3年前には、少なくとも認知症の初期症状が始まっていたと考えられる。半年ほどで急激に進行する場合もあり、身寄りのない方は認知症診断を受け、介護保険でケアマネジャーをつけたり、後見人の準備をすべきタイミングでした」
しかし、実際に馬場氏らが行ったのは、西氏に認知症診断を受けさせないまま、施設に入れるということ。西氏は昨年1月頃からサービス付き高齢者向け住宅に入居したが、勝手に帰宅するなどのトラブルが続き、昨年11月頃に現在の老人ホームへと転居したという。その間も、法人、個人を問わず、西氏の一切の財産は、馬場事務所が私的に管理してきた。
高齢者問題に詳しい弁護士法人ナビアスの生田秀弁護士が指摘する。