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透視中に居眠りして失敗? その的中率は……

 井芹氏から実験を依頼され、「瀬踏み」のつもりで通信実験をやった。それぞれ違った19枚の名刺の上に、全部あるいは1~2字を隠して錫箔を張り、前後に不透明な色の紙を1~2枚張って封筒に入れ、厳重に封印して送った。しかし、こういう不思議な精神能力の婦人だけに時々の気分の変化を感じることは人一倍激しい。19という数の多さに自分の能力が疑われたように思って感情を害したらしく、半分だけ見て、後の9個は「精神がことのほか疲労したから」と言って見ずに返してきた。また、封筒を持って火鉢に手をかざして目をつぶって考えているうちに、うとうとと眠りこけ、思わず3枚の封筒を火の中に落として焼いてしまった。これでハッとしたのがだいぶ気分に触ったとみえて、その後の実験にも二、三不都合を来したが、大体において成功だった。

 同年6月27日付大阪朝日(大朝)1面から「透視に就て 醫(医)学博士 今村新吉」の連載が始まった。前日6月26日付1面の予告には「福來博士は心理学上から実験したが、今村博士は精神病学上から最も真面目に研究し、その結果を本紙上で発表することになった」とある。連載は19回に達し、その中ではそれまでの千鶴子に対する実験結果がまとめられた。

(1)実験は、今村が行った第1回が14回、今村と福來の共同は18回で、その他、井芹が福來に提供したもの、福來の通信実験などで計52回
(2)そのうち、完全的中と認めるべきものは36回。不完全的中とすべきもの10回。全くの誤りは6回で、「完全」「不完全」を合わせれば的中率は88%
(3)的中は決して偶然とは認められない。目的物と答えとの間に一定の動かせない因果関係があると認めざるを得ない
(4)千鶴子に見る透視能力はわれわれ五感による知覚作用と同様、さまざまな影響で間違うことがある。ただ、千鶴子の正確さに至っては五感の視覚か触覚と同等と言うことができる
(5)実験の内容を見ると、千鶴子の透視能力は直接視覚とは関係がないと断定できる

(6)触覚との関連は断定はできないが、今後の実験ではわれわれの面前で物体に触ることなく透視できる状態に導くことを期したい
(7)千鶴子の持つ透視能力は、物質的実在を対象とする、五感以外の1つの感覚と仮定して初めて理解できる。ただ、この感覚は信じる者が少ない

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 この時点では、今村も千鶴子の“超能力”を疑っていないようだ。