性交経験が二極化することによる“弊害”
昭和の時代には、「上司に風俗店に連れて行ってもらった」などと自慢げに話す男性サラリーマンの声も聞こえてきました。ですが、令和のいま、一般的な企業はコンプライアンス遵守に敏感で、さすがにそうした行動や経費を認める環境にないはずです。
また、かつての農漁村に見られた「夜這い」のような文化も、いまや存在しないでしょう。町や村が一丸となって、若い衆の「筆下ろしや水揚げ(童貞や処女を奪う行為)」を手伝う時代ではありませんから、性に積極的な若者と、そうでない人たちの間で「二極化」が起こるのは、極めて「自然なこと」のはずです。
ただ、強いていえば、二極化の弊害もゼロではありません。
まず、性に積極的な男女が、1人で複数の人と性的関係をもつと、「性病」への感染リスクが高まる恐れが指摘されています。
14年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で人気授業をもつ、マリナ・アドシェイド氏は、経済学の視点から、日本でも『セックスと恋愛の経済学』(東洋経済新報社)と題する本を出版しました。
これによれば、アメリカの高校生の性行動は、過去22年間(1988~2010年)と比べて最低水準になっており、さらに一定程度、避妊などの予防措置もとっていると考えられるにもかかわらず、性病の新規罹患者の50%は「24歳以下」となり、性行動が減ったことによって、若い世代の性病がむしろ増えてしまったというのです。
アドシェイド氏はこれらの理由を、学生を次の3タイプに分けることによって説明しました。
(1)リスク回避型=性行為の際、おもにコンドームを使用
(2)リスク中立型=多くは、(1)が好むコンドームの使用を受け入れる
(3)リスク志向型=通常、コンドームを使用しない(リスクテイカー)
つまり、かつて10代の性行動が活発化していた時代には、リスク回避型の人たちも「中立型」と性交渉を持つことがあった。この場合、回避型が使用するコンドームを、中立型も拒まないので、2者とも性病から保護されていたといいます。
ところが、若年層の経済的負担が増す社会では、「リスク回避型の学生が、性行動自体をとらなくなる」とアドシェイド氏は指摘。その結果として、性行為にある程度活発な中立型の学生は、リスク志向型とセックスする確率が高まり、性病罹患のリスクが大いに上がってしまうというのです。