近年、日本でも「梅毒」の感染者が増えています。とくに20代女性の間で、その傾向が顕著で、その要因はおもに以下のようにいわれています(*1)。
・若い女性が、SNSなどを通じて不特定多数の相手と性交渉するようになったため
・コロナ禍で感染に敏感な人が増え、性病クリニックを訪れる若者も増えたため(筆者注:診察を受けることで梅毒と分かる人が増える)
・コロナが多少落ち着いたころから、性病に罹患した外国人観光客の訪日が増え始め、日本の風俗店などを利用することで、女性が感染しやすくなったため
*1 「NHK健康チャンネル」(日本放送協会)[2023年5月24日掲載]ほか
しかし、もしかするとアドシェイド氏が言うように、(1)リスク回避型の人たちが軒並み、セックス市場から離れたことで、(2)中立型と(3)志向型の性交渉の機会が増え、結果的に罹患者が増えた可能性もあるのではないでしょうか。
性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」が求められている
そしてもう一つ、性に積極的な層とそうでない層の二極化がもたらす弊害として、「未婚率」のさらなる上昇が考えられます。
なぜなら、いまも恋愛結婚をイメージする人の多くが、一生を共にするパートナー候補に対し、性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」を求めているからです。
こうなると、30歳を過ぎて過去に経験がない人、とくに男性においては、たとえ結婚したいと願っても、最初から「圏外」とされてしまう可能性が高まります。
いまや30~34歳の未婚者でも、4割前後が「性交経験ナシ」だとお伝えしましたが、女性たちが男性に「30歳過ぎて、いまさら私たちが(性的テクニックを)教えるんですか?」などとため息をつく状況も、決して少なくありません。
ですが、彼女たちのなかには、先のように「セフレの男性とは、自由なセックスが楽しめる」や、「セフレとなら、私がリードしても『女のくせに』とは見られない」など、積極的に主導権を握り、性行為を楽しむような女性も、少なからず含まれます。
過去に年上の異性と関係を持ち、いろいろ教えられた人も、男性以上に多いでしょう。そうだとすれば、恋愛シーンはともかく、未来のパートナー選びに際してまで、女性たちが当たり前のように「恋愛力や性交経験」を求めるのはおかしい、と考えるのは私だけでしょうか。
「恋愛と結婚は別」という考えも
前回ふれたとおり、結婚後に大切なのは、性的快楽に支えられたドーパミン系の情熱ではなく、オキシトシンなど癒し系物質の放出を促すような穏やかな関係性です。
スキンシップとしてのハグやセックスは大切ですが、ときには自分たち女性自身が、未来のパートナーをリードする、あるいは相手と共に「どうすれば、お互いに心地よいか」を試し、率先して行為をアップデートしていく、そんな「共創」の発想があってもよいのではないでしょうか。
そもそも結婚した後は「セックスレス」のカップルが、約5割にも及ぶような時代です。「恋愛と結婚は別」、そう割り切れば、未来のパートナー選びも、いまよりずっとシンプルで効率のよいものになるはずです。