他方で、家庭内で暴力をふるわれるなどして帰る場所もコミュニティに居場所も無く、ただ繁華街に出て身体を売って生計を立てる女性に対する支援をどうするのか、という点について大きな議論となりました。本来ならそれに対応するのは行政だろ、としつつも、実際には行政がそんな込み入ったところにまで手を突っ込んでどうにかするなんてことはできません。
ホストクラブを規制し、警察がガサ入れをすれば問題は解決するのか?
だから、話題となった仁藤夢乃さんのcolaboや、揶揄されがちなBOND、ぱっぷす、若草プロジェクトなど有志の団体が批判を受けつつも重要な機能を果たそうとしてきた、という点も見ておくべき実情ではないかと思います。そして、これらの団体の活動の受け皿として、社会的ハイリスクな女性が駆け込んだ後で、産婦人科の医師有志や、自治体のコミュニティが連携して辛うじてこのような女性でも自立できるような仕組みを構築しようとしているのは大事な社会的機能なのでしょう。
社会の仕組みとして、身体を売るような女性が出てしまうから仕方が無いのだとか、ホストクラブがそういう女性を食い物にしているから悪いのだとか、現象を単体でとらえて解決しようとすると、今回のように「ホストクラブにガサ入れをしろ」やら「ホストクラブ規制法を作れ」などの対症療法的なものが出てきてしまいます。
もちろん、世間がこれだけ騒いだわけですから、警視庁としてもガサ入れしないと立場がありませんし、新宿区もホストクラブ界隈に顔役を立てさせ社会経験の乏しい女性に高額のツケ払いを背負わせて風俗に沈めさせるような行為をしないよう「要請」するところから始めるわけですよ。
しかし、そもそもの根幹は、家庭や社会、学校、地域などのコミュニティから、暴力などを理由に切り離された女性が、社会的にハイリスクな状況に置かれてしまっていることに原因があります。端的に言えば、社会には一定の割合で育児ネグレクトをする親がいたり、子どもに暴力を日常的に振るう家庭があったり、再婚相手の男性が血の繋がらない連れ子の女の子に性暴力を加えてしまう事例があったり、そういう「家庭の事情」にどこまで入り込んで対策を考えるんですかってことに尽きるわけですよ。