「恋人の刑事に裏切られ、冤罪をかけられた女が復讐に心を燃やす物語。当初、梶はオファーを断るつもりだったが、原作を読んで、『主人公がしゃべらない方が強さや覚悟を表現できるはず』と考え、台詞を喋らないことを条件に出演を決めた。看守による凌辱や女囚同士のラブシーンなどの濡れ場も演じたが、梶は睨みつけるような鋭い眼だけで感情を表現しきった」(映画ライター)
「婚約者が暴力を振るうようになり…」続編を拒否した理由
梶の目論見は当たり、『女囚さそり』は大ヒット。シリーズ4作が制作され、さらなる続編を望む声も多かったが、梶はこれを拒否した。
「梶は『これが私のイメージだから』とジーンズで撮影所に通い、先輩からのダメ出しにも『あなたたちは初めからこれができたんですか』と言い返すなど、自己主張をハッキリとするタイプ。当時の梶はやはり漫画原作で、着物姿の女性が仕込み刀を手に復讐を果たしていく『修羅雪姫』(73年)の出演を控えており、女優としてのイメージが固定されてしまうことを恐れ、出演を拒んだそうです」(同前)
またプライベートな問題も影響していた。
「実は梶さんには当時、婚約者がいたのです。家庭に憧れを抱いていた梶さんは、『さそり』を撮り終えたら結婚し、女優を引退するつもりだったそうですが、シリーズ化が決まって多忙になると、婚約者が暴力を振るうようになり、関係は破綻。
別れる際に男性から、『これから誰とも結婚するな、死ぬまで仕事を続けろ』と言われた梶さんは『はい』と返事し、いまだに独身を貫いている。その後のインタビューで梶さんは、『人生で残念に思うのは子供を産まなかったこと』と繰り返し語っています」(女性誌ライター)
結婚と出産を犠牲にして選んだ女優の道。78年にヒロインを演じた映画『曽根崎心中』では、松の木に縛られたまま食事も摂らずに2日間徹夜してラストの心中シーンを演じ、映画賞を総なめにする快挙を達成。年齢を重ねてからは次第に脇役に回ったものの、ドラマ『鬼平犯科帳』(フジテレビ)の密偵・おまさを28年にわたり演じるなど常に一線で活躍し続けた。