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19歳でホテル経営を始めた起業家が語る、コロナ禍を乗り越え年商9億円の事業を生み出した「クリエイティブジャンプ」とは?

2024/03/19

source : ライフスタイル出版

genre : ビジネス, 読書, 社会, 働き方, 企業, , 娯楽, 経済

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――この成功により、当時、まだライフスタイルホテルという言葉が日本にほとんどなかった時代に、「ホテルめぐり」カルチャーの火付け役にもなりましたよね。その後、湯河原の温泉旅館をヒットさせたり、ホテルの可能性を次々と拡張するような目覚ましい事業を展開してこられています。

クリエイティブジャンプで社会の抱える課題も一気に解決

龍崎 ホテルという資本規模がものをいう世界で、私たちのようなスタートアップ企業が生き残っていくために、様々な挑戦を続けてきました。コロナ禍のさなかでは、すべてのホテルの休館を数ヶ月間余儀なくされ、再開後はシーズン中ですら全然誰も来ないような大逆風の試練が続きました。
 
 しかしそんなコロナショックにもめげず、2020年にプロジェクトスタートした「泊まれる演劇」では、イマーシブシアターという最新の演劇体験を宿泊と組み合わせ、ホテルをディスティネーション(目的地)化するという新しい試みに取り組みました。

 また、2022年にオープンした「HOTEL CAFUNE」という産後ケアサービスに特化したホテルでは、助産師や保育士が常駐し、24時間体制で産後の家族を支える宿泊体験を提供しています。最近では、「やわらかい旅行社」という、摂食嚥下障害を持つ方やそのご家族を対象にした、“食のバリアフリー”を実現する宿泊滞在のあり方を実現することにも挑戦しています。

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産後ケアリゾート「HOTEL CAFUNE」 ©水星

 観光業界に大逆風が吹いたような時期にも、このように自らのもつアセットの本質を捉え直し「クリエイティブジャンプ」を生み出すことで壁を突破し、非連続な成長を生み出してきました。今や年商9億円の事業規模にまで拡大しています。

 これまで、クリエイティブジャンプによって、自社の課題だけでなく、お客さんの課題、社会の抱える課題を一気に解決できる場面に立ち会ってきました。自分自身が抱えている課題に徹底的に向き合って、どうやってビジネスの枠組みの中で解決できるのかを突き詰めることが、結果的に社会の抱える課題に対する良きソリューションになることがよくあります。

――社会性の高い事業を各方面に展開しながらも、ビジネスとしてきちんと成功させている点にも希望を感じます。

龍崎 ありがとうございます。仕事において、誰しもが正攻法で戦ってうまくいかないシーンを経験していると思います。「頑張っているのにうまくいかないな」という時、本書は、オルタナティブな打ち手を生み出せる強い味方になるでしょうし、日々の企画で面白いアイデアを出したい時、あるいは扱っている商品やサービスを効果的にPRするためのノウハウも凝縮しました。

 業種・業界を問わず応用範囲のスキルなので、起業や新規事業に興味のある人のみならず、たくさんの方々に読んでいただけたら嬉しいです。

『クリエイティブジャンプ 世界を3ミリ面白くする仕事術』龍崎翔子 著(文藝春秋)

龍崎翔子(りゅうざき・しょうこ)
1996年生まれ。ホテルプロデューサー、株式会社水星代表取締役CEO。東京大学経済学部卒。2015年、在学中に株式会社L&Gグローバルビジネス(現・水星)を設立し、北海道・富良野でペンション運営を開始。その後、関西を中心に、ブティックホテル「HOTEL SHE,」シリーズを展開し、湯河原、層雲峡をはじめ全国各地で宿泊施設の開発・経営を手がける。クリエイティブディレクションから運営まで手掛ける金沢のスモールラグジュアリーホテル『香林居』がGOOD DESIGN賞を受賞。ホテル予約プラットフォーム『CHILLNN』や産後ケアリゾート『HOTEL CAFUNE』など、従来の観光業の枠組みを超え、〈ホテル×クリエイティブ×テック〉の領域を横断し、独自の事業を展開する。

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