1ページ目から読む
3/3ページ目

 もうひとつは速度です。Qi2充電器は、Apple純正のMagSafe充電器とほぼ同じ仕様であり、iPhoneと組み合わせた場合の充電速度も同等です。例えば今回筆者が購入したエレコム「EC-MA01SV」だと、iPhone 15 Pro Maxとの組み合わせでは、純正のMagSafe充電器とまったく同じ、約18W(9.1V/2.1A)で充電できます。規格の上限である15Wをわずかに超えて電力が供給されるのも、MagSafeとそっくりです。

 ところがAndroidと組み合わせた場合は、これだけの速度を出すことができません。例えば「Pixel 8 Pro」は、従来のQiにのみ対応したAndroidスマホですが、これを先程と同じQi2充電器で充電したところ、速度は約5.8W(9.1V/0.64A)が精一杯でした。一般的なQi対応ワイヤレス充電器は遅い製品でも7.5W、速ければ10Wで充電できますので、逆に速度が低下していることになります。これはいただけません。

iPhone 15 Pro MaxとQi2充電器の組み合わせだと、約18W(9.1V/2.1A)で充電できます。有線の急速充電に近いスピードです
Pixel 8 ProとQi2充電器の組み合わせだと、約5.8W(9.1V/0.64A)というさんざんな結果に。iPhoneの3分の1程度しかありません
ちなみに筆者が所有する一般的なQi対応ワイヤレス充電器にPixel 8 Proを乗せたところ、同じ条件で13.7W(11.2V/1.22A)で充電できました。Qi2対応で逆に速度が落ちたことになります

 市販のQi2充電器のネットでの口コミを見ると、このように「Androidでの充電速度が遅すぎる」というコメントが散見されます。位置合わせ自体は手動で行うにしても、旧来のQi規格でのワイヤレス充電よりも遅くなってしまうのでは、わざわざ使う価値がありません。

ADVERTISEMENT

 このように、Qi2の売りである「マグネットで吸着」「高速」という2つのメリットがともに死んでしまう以上、現状ではAndroidユーザにおすすめできる要素はありません。Qi2対応のスマホが発売され、それを入手するまでは、「待ち」というのが正解と言えそうです。

念の為、ベルキンのスタンド型Qi2対応充電器「WIA008btWH」(写真右端)でも試してみましたが、こちらもAndroidでは低速での充電しかできませんでした

従来のワイヤレス充電器はすべてQi2に淘汰される?

 以上のように、MagSafe充電器と同等の性能でより安価なQi2充電器は、iPhoneユーザにとっては現時点ですでに「買い」である一方、Androidユーザにとっては「時期尚早」というのが現時点での結論ですが、将来性という観点では、標準規格であるこのQi2の右に出るものはありません。

 Qi2搭載のAndroidスマホが発売されれば、iPhoneでMagSafeが登場した時と同様、その利便性の高さはすぐに広まり、従来のQiにだけ対応するワイヤレス充電器を淘汰していくのは間違いありませんし、なかでもiPhoneとAndroidの両方を所有しているユーザにとっては、欠かせない存在となるでしょう。

マグネット吸着機構を持たない、従来の「Qi」およびQiの認証すら取得していない互換ワイヤレス充電器は、今後は淘汰されていくと考えられます

 Qi2充電器はまだ発売直後でありながら数千円程度のリーズナブルな価格で販売されており、今後はスタンドタイプなどバリエーション展開にも期待できます。将来的にはスマホ以外のデバイスに波及する可能性もあり、USBでいうところのUSB Type-Cと同じく、将来的には至るところで「Qi2」を見かけるようになる可能性も、十分にあると言えそうです。