「龍谷大に入った時点でも、かけ算わり算が怪しかった」
――高校の授業で範囲が終わらなかった?
濱井 高校の授業では、教科書を最後まで終わった科目がひとつもありません。偏差値40の商業科だったので仕方ないのですが、国語は3年間古文漢文をやらず、日本史は江戸時代に入る前まで。英語は毎年教科書20ページも進まず、それでも進級すると新しい教科書に変わるので、わけがわからないまま新学年の授業を受けるんです。物理は科目の存在すら知りませんでした。
――その状態で大学に入ると、苦労するでしょうね……。
濱井 勉強ができない人がよく「何がわからないのかわからない」といいますが、まさにその状態です。一般受験で龍谷大に入った生徒には当然の基礎知識が、私にはほとんどありませんでした。
なので授業で発表してもまともに話せず、周りとの差がどんどん開くばかり。それがショックで「編入で滑り込んだ自分と、一般入試で受かった他の学生は違う。自分はここで求められる知的レベルに達していないんだ」と落ち込み、勉強を再開しました。
――龍谷大の環境には満足しながらも、仮面浪人として3浪、4浪の時期に。
濱井 はい。龍谷大に入った時点でも、数学の中3の問題集が解けないレベルでした。実はかけ算やわり算でさえあやしかったので、小学校低学年レベルに戻る必要がありました。それなのに最初の大学も龍谷大も、数学知識が必要な経済学部。ついていけないのは当然です。
そもそも高校と最初の大学は推薦入学、龍谷大は編入なので、受験勉強のやり方が全然わからない。お金もないので塾にも通えず、学力は全然上がりませんでした。
――大学4年のときは就職活動をしたのですか?
濱井 「せっかくの新卒カードを使ってみるか」と関西を中心に80社ほど受けましたが、全て落ちました。就職すれば地元に戻らずに済むと思っていたのに受験も就職もできず、ようやく10月に証券会社に内定が決まったのものの、正社員ではなく契約社員で……卒業までは失意の日々でした。
高卒社員から「大卒なのにこれも知らんのか」と逆学歴マウント
――卒業後はどうしたんでしょう。
濱井 浪人生活の継続は決めていましたが、最初の会社は業務時間が長く勉強時間がとれなかったので、別の地元企業に転職しました。でも、地元では大卒者は超希少種ですから、それに対する嫉妬で〈逆〉学歴マウントされるんですよ。
――逆学歴マウント?
濱井 そうです。高卒の上司から「おまえ大卒なのにこんなんも知らんのか」など、散々バカにされるんです。私をイジメた奴がいる地元で働くだけでも悔しいのに、学歴があることで余計ボロクソに言われる。
しかも当時は「実力がないのにまぐれで編入したから、自分は龍谷のレベルに達していなかった。それで〈大卒〉なんて胸を張れない」と卑屈になっていました。そうするとさらに視野が狭くなり、仕事でもミスするし、勉強にも集中できず、負の連鎖でした。
そこで「地元の人でも驚くような大学に行くしかない」と思うようになったんです。これが23歳、5浪めのときです。