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陽水さんの歌詞は「みんな歌ってみ」と思う気持ちよさ

――ちなみに民生さんと陽水さんのコンビは、その後も「渚にまつわるエトセトラ」(1997)、「オリエンタル・ダイヤモンド」(2007)の2曲をPUFFYに提供しています。

亜美 民生さんと陽水さんはお互いを尊敬しあっていて、キャッチボールがすごく上手くいってるふたりですよね。ユニットも組んでらっしゃいますけど、お互いが好き同士で、細かいことを言わなくても理解しあえる。陽水さんはこう来るだろうな、奥田くんはそう来るよね、みたいな感じで。

由美 陽水さんの歌詞を最初に文字で見ると、「え!」とか「は?」とか思うんです(笑)。でも歌うとめちゃめちゃ歌いやすい。それは3曲ともそうですね。どの曲も歌っていて気持ちよくなる。文字で見るのとまったく違うなって。だからみんな歌ってみ、って思います。

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――「アジアの純真」のレコーディングでは、民生さんの歌のディレクションが厳しかったそうですが。

由美 いま思うと厳しかったよね?

亜美 そうだね。何回も何回も、ふたりの声が合うまでやり直して。いま思うと、どえらい手間をかけてくれたんだなって感じます。

由美 ビブラートはいらないって言われたのを覚えてます。もともとできないんですけど(笑)。とにかくまっすぐ歌ってほしいって言われました。

©三浦憲治

「民生さんは野良犬を2匹保護したみたいなノリだったんじゃ…」

――「アジアの純真」は96年5月にリリースされて大ヒットを記録しました。そのとき民生さんと喜びを分かち合うようなことはありましたか?

亜美 なかった気がする。けっこう立て続けにレコーディングがあって、私たちは馬車馬のように働いていて(笑)。次の曲、また次の曲みたいに、どんどん、どんどん。民生さんとはよく会ってたんですけど、ヒットを喜ぶことはなく、もちろん褒められることもないし。一緒に「疲れたね」って、はあはあ言いながらやっていたと思います。

――その後も民生さんのプロデュースによる楽曲が次々にリリースされましたが、民生さんとは音楽の話をよくしたんですか?

亜美 音楽の話は……したかな?

由美 うーん。民生さんは釣りのアレ、ルアーをコップに入れる練習ばかりしてたよね。

亜美 紙コップを立てて、そこを正確に狙うキャスティングの練習をいつもしてるんです。上手く入ればコップは倒れないんですけど、外すと倒れるので、私たちがタタタタと行って、それを起こすという。ずっと犬みたいに(笑)。民生さんは野良犬を2匹保護したみたいなノリだったんじゃないですか? こいつら意外と言うこと聞くかもなって。 

――プロデューサーとアーティストという関係とはイメージがだいぶ違いますね。

由美 お弁当が届いたらお味噌汁を作る係とか、年下らしいこともやってたよね。エンジニアの方は濃いめが好きだから、お湯は少なくとか。

亜美 私がチューブから出して――。

由美 私がお湯入れて(笑)。「はい、どうぞ」って回してたでしょう?

亜美 楽しかったね(笑)。

由美 そういう後輩っぽいことをちゃんとしてました、当時は。

撮影 三浦憲治

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