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「助けて」という患者の声を背にエビデンスと権威に挑戦を試みる

 一方で全国の医師の中に、エビデンスで推奨されないことにあえて突き進もうという者がいる。教授の言う五%の改革者だ。

大天使ミカエルは、西條と真木に何を伝えるのか/画・日置由美子

 彼らは「どんな方法でもいいから、命を助けて」という患者と家族の声を背に、エビデンスと権威に挑戦を試みる。失敗すれば命取りだ。

 そのとき、医師はどう生きるべきか。

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「『ミカエルの鼓動』の西條のように、エビデンスで推奨されないことにあえて突き進むときは、誰でも怖い。それでも、医師は忘れてはならないのです。医療は、人が人に対して行うものであるということを。そして、命はときにエビデンスを超えて、奇跡を起こすことがあるということを。医師は虚勢を張らず、怖がってもいい。手術中、極限の状態で押しつぶされそうな恐怖を抱きながらも、一人ひとりの患者の立場で考えて決断できる、そんな情熱と勇気を持った侍のような外科医でありたい。そしてそんな若い外科医を育てたい」

 これは教授の言葉だが、私には、挫折しながら吹雪の中から起き上がろうとする西條の声のように響いた。

 読み方はいろいろあるだろうが、事実の世界に生きる私は、ミステリーの領域を超えて、五%の改革者の志を撚り合わせた小説として読んでほしい、と思う。