もちろん教員のみなさまは人格、識見ともに優れた方ばかり、のはずです。でも本業である授業をめぐって学生に「内容が理解できない」と言わせてはなりませぬ。決して安くない授業料に見合う授業をしていただかなくては、学生との「契約」を違えることにもなりかねません。

写真はイメージです ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

教員が「赤ちゃんにはミルクではなく母乳を」と…

 必修科目を担当するある教員とは、僭越ながら頻繁に議論しました。

 幼児教育の基本と細目を定めた文部科学省の『幼稚園教育要領』に依拠して毎回お話をなさいます。熱意は十分に伝わってまいります。敬意を表します。

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 ただ話があちらこちらに飛んで、本日の主題がわかりません。シラバスの中身とも違います。

 合間に学生を指差して「はい、あなたこれはどういうことですか」と質問なさる。答えられない。当然です。ずっと聞いていた当方も何を問うているのかわかりません。複数の学生が縋るような視線を当方に投げて寄越します。

 合点承知、しばし待たれよ。

 赤ちゃんには「ミルクではなく母乳を」とか「紙おむつではなく布おむつを」という趣旨の発言も気になりました。母子の体調や生活環境に応じて考えればよろしいのではありませんか。

 これから親になるかもしれない若い衆の選択の幅を狭めてはいけない。おっしゃるなら詳しい根拠と最新の研究データをお示しの上でどうぞ。

価値観の押し付けにはNOを

 潮時です。

 挙手をして発言の許可を得ます。学生としての分をわきまえ、冷静に、礼を失しぬよう言葉を選んで申し上げます。

「ご自身の価値観は尊重も、押し付けと解釈されかねないご発言の再考を」

「冒頭で本日講義の柱を明確に示されたし」

「人を指差す行為はお控えあれ。某国ならその場で撃ち殺されるおそれがありますぞ」

 教員の研究室でも膝を突き合わせて話したことはいちどではありません。改善を約束してくださった事柄もあります。豊富な教育経験をお持ちです。

 お願いします。理解できないことの責任を学生にだけ帰すのはおやめくださいね。

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