「OpenAIのChatGPT(以下、GPT)など、これまでアメリカの独擅場だったAI市場に中国が殴り込みをかけてきたと世界を震撼させています」(経済誌記者)
にわかに話題を集める中国製AIの「ディープシーク(DeepSeek)」。その実力のほどは――。
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ディープシークの“偉業”と、その影響とは?
猫も杓子も口を開けばAI、AIのこのご時世。一山当てようと、グーグルやアマゾンなど巨大テック企業も参戦して鎬を削る成長分野に突如現れたのがGPT並みと評される「DeepSeek-R1」(以下、R1)。
開発したのは、中国人投資家の梁文鋒が2023年5月に創設したAI専門のディープシーク社だ。
生成AIに詳しい株式会社Algomaticの大野峻典CEOが解説する。
「画期的なのは、誰でも利用可能なオープンソースであることと圧倒的な低価格路線です。仮にAPIを利用してR1を自社サービスに組み込むとすれば、他社の同等性能モデルと比較して、コストは約95パーセント引きになる。ケタ違いの価格破壊です」
中国がトップレベルの生成AIを安価で作れると証明した影響は大きい。AIの質を左右する半導体で出遅れる中国の“偉業”は、米国製の高品質半導体の信頼をガタ落ちさせた。
「折しもトランプ新大統領がAI分野へ巨額の投資を喚起している最中の出来事。米国内はもとより世界中でディープシークショックが起きています」(前出・記者)
AIにもお国柄があるらしい。
どんな代物なのか。R1ご本人に直撃した。
――R1とGPT最新モデルとの違いは?
〈省電力な日本語最適化vs汎用性の高い多言語処理〉
好戦的である。わざわざ「vs」という表現を使い対立構図を示すあたり、AIにもお国柄があるらしい。日本語にはよほど自信があるようで「村上春樹の比喩解釈」など、日本語の機微にはGPTより通じていると主張する。
試しに2024年の漢字検定1級で出題された書き取り20問をやらせると、GPTは10問正解だったが、R1は11問正解で漢字使用国の面目は保った。
基本的に自己中心的。日本語で質問すると、〈今忙しいので、後で試してください〉と中国語であしらわれることもしばしば。