神父は供述で…「一切日本語を使わねぇんだよ」
通訳が間に入って調べを始めたが、どうしても呼吸が乱れちまうよな、外人相手では。調べってのは、ホシと対決しながら、言葉のニュアンスや表情を読み取りながらやるもんだ。神父は日本語は百も承知でペラペラだよ。それが、一切日本語を使わねえんだよ。微妙な点になると、「迷惑をかけてはいけないから」と、わざわざ辞書を引いてから答えるわけだよ。調べの時間も、午前10時から午後5時までに、あらかじめ約束してあったんで、時間が来るとピタリやめなけりゃならねえ。
オレはつくづく思ったよ。言葉の通じないのは、何としても乗り越せないと。
“落としの八兵衛”と言われても、さすがに調子が狂って勝負にならなかった。
事情聴取の間、神父は血液型の検出を警戒してか、飲み物などには一切手をつけなかったという。
5月24日付朝日朝刊トップには「入院したベルメルシュ神父」の見出しが。「22日、過労による疲労が激しく、新宿区下落合の聖母病院に入院した。しかし捜査本部は、同神父が事件に関係があったかどうかについてはまだ断定せず、『調べは完全には終わっていない』と言っており、教会側との間には微妙な空気が漂っている」とした。しかし、当時の小倉謙・警視総監は27日、「事情聴取は一応終わった。近くまた出頭を求めることはないと思う」と語った(28日付朝日朝刊)。
駐日ローマ法王庁公使も潔白を訴えた
この間、神父はベルギーにいる両親に手紙で「潔白」を訴え(5月24日付朝日夕刊・ブリュッセル発ロイター電)、駐日ローマ法王庁公使は朝日の質問書に対して「本人に代わって潔白を断言する」との回答を寄せた(5月26日付朝日朝刊)。
6月1日付毎日朝刊は、同紙の質問書に神父から回答があったことを伝えた。回答は事件に直接触れず、「私のことについて、想像だけに任せ、行き過ぎたことを話したり書いたりした人々に対してさえも、私は何の恨みも抱きません」とした。膠着状態が続く中――。
「ベルメルシュ神父が帰国 警視庁はショック」(朝日)、「捜査本部に通知なし 理由は病気療養」(毎日)、「スチュワーデス殺し迷宮入りか 解決の手がかり失う」(読売)、「昨夜エールフランス機で」(産経)……。6月12日付夕刊各紙の社会面トップにはこんな見出しが躍った。
