さて、8月ももう後半、ペナントレースもいよいよ終盤。という事は、この連載もそろそろ終盤に差し掛かってきた、という事である。思い起こせば最初のコラムの表題は『あえて言う、オリックスは先発投手の替え時を間違っていないか』。「しょっぱなから采配批判かよ」という激しいブーイングを浴びながら書いたのは、「先発投手の替え時」の話だった。当然のこの素人談義丸出しのコラムは公表直後から猛烈な非難を浴び、コラム対決でも惨敗を喫する事となっている。

リードした6回以降をどうするのか

 しかし、その後のオリックスの状況は当時の筆者の懸念をある程度裏付けるものとなった。具体的にデータを見てみよう。表1はこのチームのイニング別得失点及び、その差、更には差の総和を示したものである。

出典:プロ野球チャート(最終確認、2018年8月19日)より筆者作成。優れた先行研究に感謝したい。

 この表からはチームの典型的な戦い方がわかる。まずイニング別失点率は、2回0.330点、3回0.312点。各々リーグ2位と1位になっているから、序盤は先発投手陣が好投している事がわかる。この数字は4回以降悪化するが、貧打が指摘される今シーズンのオリックス打線は何故か6回にだけは爆発し、この回で一旦リードを奪う事になっている。

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 しかし問題はここからである。7回と8回の失点率は0.55点と0.532点、7回以降に打線が沈黙する事もあり、7回には逆転され、8回にリードが広がっている。抑えの好投もあり、その差は9回に若干詰まるものの(※1)、最終的に平均0.2点差で敗北する。そうやはりこのチームの問題は「リードした6回以降をどうするのか」にかかっているのである。

 理論的に考えて、解決策は二つしかない(※2)。第一の方法は、先発投手が「もう少し長く投げられるようになる事」であるが、そもそも今シーズンのこのチームの問題は、安定した先発投手がいない、という事に始まっている。勝ち頭のアルバースは後半戦に入って未勝利、それに次ぐ勝ち星を挙げているのは、6勝11敗の西と、6月に登録を抹消された田嶋である。東明、松葉といった過去に実績のある投手の復調の兆しは好材料だが、東明が怪我上がりである事もあり、「長く投げられる先発投手不在」という状況を抜本的に変化させる材料になるようには思えない。

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※1 なおオリックスの9回の失点率は、0.31点でリーグ1位になっている。時に「増井劇場」などと揶揄される彼の仕事であるが、筆者を含めたオリックスファンはもうちょっと彼に敬意をもって応援すべきだろう。
※2 「そもそももっと点が取れればこの問題は解決するのではないか」、という意見もあるが、この問題については、別稿「吉田正尚の悲哀(仮題)」にて、別途議論する事としたい。

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