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松井玲奈が直木賞作家・島本理生と語る『ファーストラブ』

直木賞受賞記念対談・読書の魅力を教えてくれた

読者やファンを意識することは…?

松井 この作品の終わり方も好きでした。前向きで素敵な終わり方で。島本さんは、小説を書かれるとき、読者のことは意識されるんですか?

島本 若い頃は、読者のことを考えているようで、でもやっぱりその瞬間自分が1番書きたいものを、という気持ちが強かった。けど、長く書いていく中で、重い題材でも、何か抜けだったり、救いがあるようにしようと考えるようになりました。

©石川啓次/文藝春秋

松井 作品のアイディアは、思いついたらパッと書くんですか、それとも、ためておくんですか?

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島本 ためておきますね。パソコンにストックがいっぱいあって、何年か後になって出すこともあります。最近だと、出産前だった8年くらい前に書いた短篇を、雑誌に発表しています。

松井 あえて寝かせておくんですか?

島本 描写が緻密なものほど、一気に書くと、後半がスカスカになってきてしまうので、描写力を維持するためにいったん置いておくことが多いです。

 松井さんは、普段、ファンの方の反応を気にされますか?

松井 自分が出演した作品に関しては、あまり気にしません。ファンの方は、ファンであるが故の優しさで全て肯定的に受け止めてくれるので、例えば私がアフロで顔が全然見えない役をやっても、「それも面白い」って言ってくれる。でも、その作品で初めて私のことを知ってくれる人がどう思うのか、そこにちゃんとアンテナを張ってないといけないな、と思っています。

島本 あのアフロで顔が見えない役(ドラマ「海月姫(くらげひめ)」のばんばさん役)って、女優さんがやるには画期的だなと思いました。