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「デモでは何も変えられない」

 高原は、武蔵高校時代からマルクス主義の本を読み、ソ連の文化に魅了されていた。入学した2015年、国会前で安保関連法案反対の運動が盛り上がっていたが、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)には違和感を持っていた。デモでは何も変えられない、ストライキを行ったほうが効果的と考えていた。

 高原委員長は全学連大会でこう演説していた。

「『戦争か革命か』が問われているのです。戦争を止める展望は、労働者階級の国際連帯です。労働者階級の国際連帯というのは、日本の労働者階級・学生は日本の帝国主義政府を倒す、アメリカや中国の労働者階級・学生は、やはり戦争に突き進む自国の政府を倒すということです。革命とは労働者階級が主人公の社会をつくり上げることです。学問が、大企業や国家の利益に資するためのものではなく、本当に真理を追求するものとして存在できるような、大学が研究者や学生自身の手によって運営されるような社会にしていくことです」(『前進』blog News)

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高原恭平氏 筆者撮影

 威勢がいい。しかし、東大生の自民党投票率51.6%(2017年の衆議院選挙。東京大学新聞調べ)とあって、かつて内ゲバを繰り返してきた過激派のアジテーションに東大生は耳を傾けるだろうか。
*高原は2021年3月に委員長職を離れ、それ以降、全学連や中核派との関係は断絶している。

経産次官候補だったあの人も

 武蔵高校、武蔵神童は国に逆らってばかり、左にシフトする人ばかりではない。安倍晋三政権に徹底的に忠誠を誓った武蔵神童がいる。

 元首相秘書官の柳瀬唯夫(1980年卒)だ。安倍首相も「柳瀬秘書官の発言を私は信頼している」と答弁するほどだ。柳瀬は東京大法学部から経済産業省(通産省)へ。

報道陣の質問に答える元首相秘書官の柳瀬唯夫経済産業審議官 ©時事通信社

 加計学園問題で「首相案件」と発言したと愛媛県や農水省の文書でバラされたり、愛媛県や今治市の関係者に会ったことを市職員にチクられたりしたが、本人はしらを切り通して、こう繰り返すばかりだった。

「私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」

「自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」

 柳瀬の記憶力はどうなっているのか。武蔵OBをすっかり落胆させた。

 柳瀬は将来の次官と目されていたが、2018年7月、省内ナンバー2の経済産業審議官を退任。経産省を去った。霞ヶ関では「究極のヒラメ官僚」と陰口を言われながら、最後まで政権を守る姿勢は首尾一貫しており、ブレることはなかった。