【イベントレポート】制度対応から経営支援へ、価値転換の向こう側 経理・財務部門のあるべき姿の探索 ~その月次業務は、本当に必要なのか? 経理財務の役割再定義と価値創出の挑戦~

NEW

〇企画趣旨

急激な経営環境の変化、グローバル市場における競争激化、さらにはデジタル技術の進展により、企業の経理・財務部門にはこれまでにない変革が求められています。従来、経理部門は「記帳・決算・報告」といった定型業務を中心に担い、財務部門は「資金繰り・金融対応」といった管理的役割を担ってきました。しかし今、企業全体のパフォーマンスを左右する中核機能として、これら部門の役割は大きく変わろうとしています。

現場ではいまだに、属人化・紙ベースの処理、業務のサイロ化といった課題が残り、変化に向けた足かせとなっています。一方で、AIやRPA、BIツールといったテクノロジーの進化により、従来の手作業や単純集計業務は大幅に自動化・効率化されつつあります。この流れの中で、経理・財務部門は「記録と処理の担い手」から、「経営の意思決定を支える分析・提案の担い手」へと変わらなければなりません。

また、製造業などを中心に、バリューチェーンやサプライチェーン全体の最適化が急務となっており、財務的視点から事業の収益性やリスクを可視化し、経営に貢献する力が求められています。すなわち、「経理=守り」「財務=資金担当」という固定観念から脱し、両者が一体となって経営戦略と現場実務をつなぐハブとなることが重要です。

本カンファレンスでは、こうした経理・財務部門の役割変化と課題を深掘りし、今後求められる機能・人材像・組織のあり方について、多様な視点から議論した。

■基調講演

経理の一流、二流、三流
~ AI時代における経理財務部門の生き残り戦略 ~

合格率No.1簿記講師、税理士
建設会社総務経理担当役員
石川 和男氏

合格率ナンバーワン簿記講師、税理士、明治大学客員研究員、建設会社総務経理担当役員、一般社団法人 国際キャリア教育協会理事、ビジネス書著者(31冊)。1968年北海道生まれ。埼玉県在住。 大学卒業後、建設会社に入社。経理部なのに簿記の知識はゼロ。上司に叱られ怒鳴られる日々をすごす。はじめて管理職になったときも、「部下に仕事を任せられない」「優先順位がつけられない」「スケジュール管理ができない」と、ないない尽くしのダメ上司。深夜11時まで残業をすることで何とか仕事を終わらせる日々が続く。このままでは人生がダメになると一念発起。時間管理やリーダー論のビジネス書を1年で100冊読み、仕事術関係のセミナーを月1回受講するというノルマを課し、良いコンテンツやノウハウを取り入れ、実践することで徐々に残業を減らしていく。さらに個人だけではなく、チームとしても効率的な時間の使い方を研究し、生産性を下げずに残業しないチーム作りを実現する。残業をゼロにし空いた時間で、各種資格試験にも挑戦。働きながら、税理士、宅地建物取引士、建設業経理事務士1級などの資格試験に合格。建設会社のほか税理士、講師の仕事も始める。

◎AI時代の生き残り戦略

能力主義の時代=AI時代に必要な4つの能力は、(1)専門的能力 (2)リーダーシップ能力 (3)クリエイティブ能力 (4)コミュニケーション能力、である。

例えばクリエイティブ能力。缶入り煎茶は「お~いお茶」に名称を変えたところ売上は6倍の40億円となった。カップカレーライスは「カレーメシ」に、フレッシュライフは「通勤快足」、モイスチャーティッシュは「鼻セレブ」にそれぞれ変えたところ、飛躍的に売上を伸ばした。数多くの案=を考え、選りすぐってを高めた結果である。

ビジネスパーソンの専門的能力でいえば、「掛け合わせ!」がキーワードになる。英語×会計、税理士×プレゼン能力×中小企業診断士×占い師、など。こうしたユニークな存在になるには、“緊急じゃないけど重要なことをやり続ける時間を作る”ことが大切。ある会計事務所は、多忙な中でも毎週特定の曜日・時間帯を英語学習の時間と決めて継続し、多くの会計士が習得した。結果、数年後には海外での会計業務を多数受注し、業容を拡大することができた。

リーダーシップ能力について。経理は経営管理の略称だ。そもそも誰よりも最初に会社の数字を見るのは経理担当者である(新入社員であっても)。数字を踏まえて各部署に意見が言える、攻めの経理を目指したい。

再びクリエイティブ能力について。アレックス・オズボーンの7つの切り口を以下に紹介する。
(1) 「何かと何か」を組み合わせることができないか? (2)他で使ったものを他の場面(方法)でも使えないか? (3)変えてみたり、調整したりできないか? (4)入れ替えたり、他の人(物)ができないか? (5)拡大、大きくしてみたら、どうか? (6)「常識と反対」のことをしてみたら、どうか? (7)「縮小・削除・小さく・シンプル」にできないか?

例えば(1)からは、消しゴム+鉛筆=消しゴム付き鉛筆が生まれた。ライバル会社や異業種と組むことはできないか、財務と営業でタッグを組めないか、考えるのもいい。(2)では、バナナをチョコバナナにするなど付加価値をつければ利益率が上がる……そして(7)では、支払いを分割にする、余計な商慣習を排除する、といったことを考えてみる。経理財務ならではの視点でクリエイティブ能力を発揮しさまざま考え、大量のアイデア出しをして実践してみてほしい。

コミュニケーション能力について。大切なことは数字で伝えること。いつできる?と聞かれたら「もうすぐです」ではなく「10分後」などと具体的に答える。また、「どうして」という問いは人を萎縮させるので、「どうしたら(いい)?」と、考えさせ人を成長させる問いを発することだ。また、人を呼ぶ時にはすぐに集合させてはいけない。「5分後に集合」などと時間を明確にして指示し、チーム全体の集中力や効率を高めることが重要だ。

目標だけでは夢は実現しない。目標⇒目的⇒期限⇒具体的数字、と落とし込む。売上を上げたい⇒利益を上げて◎◎したい⇒◎◎までに⇒では月間◎円稼ぐ、という具合である。

まとめ。AIの導入があっても経理職は消滅しない。仕事を奪われるvs奪われないの二元論ではなく、棲み分けが重要なのだ。手を動かす仕事から頭を動かす仕事へ。具体的には以下を目指したい。
・管理会計、CF(キャッシュフロー)を含めた精度の高い資金繰り
・少子高齢化、外国人採用、リーダーシップ能力
・クリエイティブな仕事。ゼロからイチを作る
・他部署とのコミュニケーション、攻めの経理

経理・財務はすべての職種において必要な知識であり、特に経営者には必須だ。「会計が分からなくて経営ができるか!」(稲森和夫氏)。会社組織を継続していくためには経理・財務は永遠になくならない分野である。

■課題解決講演(1)

実務目線で考えるAI時代の経理部門の未来
~ 変革をリードするための戦略と実践の手引き ~

株式会社マネーフォワード
執行役員 グループCAO
松岡 俊氏

1998年ソニー株式会社入社。各種会計業務に従事し、決算早期化、基幹システム、新会計基準対応PJ等に携わる。英国において約5年間にわたる海外勤務経験をもつ。2019年4月より当社参画。『マネーフォワードクラウド』を活用した「月次決算早期化プロジェクト」を立ち上げや、コロナ禍の「完全リモートワークでの決算」など、各種業務改善を実行。中小企業診断士、税理士、ITストラテジスト及び公認会計士試験(2020年登録)に合格。

 ◎既存AIツールを使っての経理改善/弊社経理本部でのAI活用事例

弊社はGeminiを主に利用している。非常に多くのファイル添付が可能で、Docファイルなどを添付し内容を要約/会計上の論点をサマリー/複数資料間の不整合を確認、といった業務に使っている。※実際の利用画面説明あり

Geminiの具体的な経理活用案は、以下。
・構造化されていない情報を構造化
・各会計論点に特化した専門家GMEを作成し、相談
・開示資料のチェック(印刷会社ガイド、チェックリスト)
・ポジションペーパー作成サポート
・画面操作を動画撮影 ⇒ マニュアル作成
・海外グループ会社との英語やりとりサポート
・文字起こしした会議メモを整った議事録に変換

多くの種類のファイルを添付できるようなったことで、このように経理としての活用場面も大幅に増加した。

Canvas(キャンバス)という機能を使えば、エンジニアでなくてもアプリを簡単に作成することができる。J-soxで監査対象となっていないようなプロセスで、手間削減のためのアプリ、マクロ等の作成/自社IT部門にシステムの要件を伝えるためのモックとして作成、といった活用が考えられる。

基準や税法などのリサーチ(Deep Research)にもAIは有用だ。例えば、リース会計基準の改正に伴い関連する各種基準等が改正される場合に、それら全てを分析して一覧表にまとめてくれる。数値の増減分析にも使えるし、会計データを読み込ませてディープリサーチをした上で、Canvasとの組み合わせで“インフォビュー”機能で視覚化すると、経営者に提出する経理速報を読み込ませ図示化して数値の羅列でないわかりやすいレポートになる。

オフィスツールに組み込まれたAIも進化している。エクセルでの関数作成、ワードでのテキスト要約や表現方法変更・内容の増強、メール作成・要約・返信作成などを実際に行っている。会議スケジュールの管理、移動やプレゼン資料の作成にも使える。AIを意識しなくてもAIの恩恵を受けられる時代になっているのだ。

最近登場したGemini CLIでは、コマンドラインからGeminiを操作/ターミナルで対話型AIを利用/開発者向けの高度な活用方法/経理業務の自動化に貢献、といったことが実現している。

◎会計ツールにAIが組み込まれた世界/AI Agentによる「処理」

AI格差は拡大している。自分でプロンプトを考えられる、適切なツールを選択できる人はAIの恩恵を享受できるし、スキルアップ・生産性向上のチャンスだ。一方、一般従業員は必ずしもその恩恵を受け切れていない。弊社を含め、会社全体としてAIによる生産性が向上していない状況である。

経理におけるAIの今後の(中長期的)展望は以下。当社もベンダーとして下記の世界を目指しつつ開発を進めている。
・いつものツールにAIが自然に溶け込んでいる世界
・経理部門全体でAIの恩恵を受けられる形
・いつもの操作でAIがバックグラウンドで動き業務をサポートする
・新しいツールを別途導入したり操作を覚えたりする必要はない

AIエージェントが人間に代わってAccountingをしてくれる、処理ボタンを押してくれる世界を目指したい。

基幹システム/他者SaaS/コミュニケーションツール/その他ツールの中心に「マネーフォワードクラウド」が位置し、膨大なData Martを活かすユーザーフォーカスでオープンなエコシステムを構築する世界観を目指す。

社内データをAIで活かすには、まずは紙の社内情報を電子化し業務フローに組み込むことだ(PDFでもいいし、構造化されていなくてもいい)。これをやっておくことでAI時代に大きく差がつく。
・データは完璧でなくても、AI活用できる時代へ
・非構造化データもAIは読み取り活用できる
・紙情報をPDF化しシステム保存で未来に備える
・まずは情報をシステム内に放り込んでいく事が重要

■特別講演(1)

最高のコーポレート組織を創る
~経営目線で最先端を走り事業を推し進めるリーダーシップ~

クックパッド株式会社
執行役/取締役/CFO
犬飼 茂利男氏

公認会計士試験合格後、朝日監査法人(現・有限責任あずさ監査法人)入所。その後、ゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパン(有)に入社。ベンチャー企業を経て、2016年7月クックパッドに入社。財務本部長を経て執行役/取締役/CFOとなる。経営革新後のコアメンバーとして活躍中。

弊社のミッションは「毎日の料理を楽しみにする」。料理レシピ投稿・検索サービス「クックパッド」を世界67カ国、26言語で提供している。この他、生鮮食品オンライン市場「クックパッドマート」や料理AIコーチング“moment”も展開。新規事業も含め、自分たちはスタートアップだという意識で活動している。

コーポレート(組織)の存在意義は、意思決定の後押しとプロダクト開発に集中できる環境作りだ。

この2点を実現するにあたり、守りのコーポレートからの脱却を図ることも意図して、人の配置と仕組み化を行った。経営目線で判断することができるメンバーと専門家を揃え、徹底的に業務を仕組み化、外部(外注)化した。現場が楽になるには何をしたらよいのか、を考える組織ができたと考える。

ビジネスにおけるリーダーシップは、ピープルリーダーシップ/プロセスリーダーシップ/課題解決リーダーシップの3つがある。このうちビジネス課題に対して答えを導き、答えを導くための手法を考え出し実行する、課題解決リーダーシップが最も重要だと考える。

社会人になってからもレベルアップ可能な課題解決スキルには、ハードスキルとソフトスキルがある。前者は知識/経験/課題解決スキルなど。後者はコミュニケーションスキル/人脈・人付き合い/見た目・立ち居振る舞い、だ。ハードスキルのうちの知識や経験は生成AIにより置き換えられるリスクがある。よって、私はコーポレートのメンバーには課題解決スキルを向上させるよう説き、意識してもらっている。

弊社では、打ち手(HOW)の会話の前に目的と成功の姿を明確にするようにしている。目的(Purpose)は「なんのために議論したいのか」。成功の姿(Payoff)は「実現した時にどんな状態になっているのが理想なのか」だ。例えば、予算作成にあたってのPurposeは、来年一年間の経営判断に資する予算を作成したい。Payoffは、数字を達成していくことで事業の成長スピードが加速する、である。

事実と仮説も必要だ。常に課題発見をし仮説を立てて課題解決をする、仮説思考でありたい。事実に基づく課題発見⇒目標設定⇒仮説の策定⇒解決策立案&選択⇒実行⇒振り返りという流れである。またCFOとして、生成AIが本格導入される近い将来を予測しつつシンプルに徹することや、定型業務は共通化・外部化して非定型業務は徹底的に属人化することも意識して業務執行している。

繰り返すが、コーポレートの存在意義は、意思決定の後押しプロダクト開発に集中できる環境作りだ。クックパッドが定義する課題解決リーダー像は以下。

いきいきと仕事ができる内部環境を整えるように意識している。
・社会貢献性のあるミッション実現にむけた事業への貢献
・ヒト、モノ、カネがある「再生創業期」の恵まれた環境を活用
・フラットな組織で頻度高くフィードバックを実施
・他社に負けない圧倒的な成長機会を提供
・グローバルな舞台での活躍機会

Make everyday cooking fun!

■課題解決講演(3)

経理業務を自動化し、データを活用して
事業価値を向上する「invox」

株式会社invox
代表取締役
横井 朗氏

1977年3月生まれ。東京工科大学卒業。2000年にエンジニアとしてのキャリアをスタート。03年に(株)ビーブレイクシステムズ(東証マザーズ上場)に参加し、業務システムの開発を担当。15年には、(株)クラビスに参加し、16年より取締役・CTOに就任。この2社での経験を生かし、19年に(株)Deepwork(現・invox)を設立。企業間取引の自動化に取り組む。

経理・財務部門は、テクノロジとAIエージェントの進化によりルーチン業務から開放された未来に、どこで価値を出していくのかが問われる。先行して進むIT業界では、繰り返し作業が多くパソコンで完結する仕事は、コストが大きいところからAIに置き換えられている。「プログラムができる」ではなく「ソフトウエアを使って課題を解決できる」エンジニアへの変化が必要だ。

経理・財務に置き換えると、ルーチン業務は自動化し、経理・財務が持つ情報を活用して事業価値を高めるようにすべきだろう。例えばデータを活用してコストを削減することで利益を増やし経済的価値を向上する。脱炭素経営に取り組むことで社会的価値を高め競争力を向上する。これらを意識したい。

弊社は「事業を通じて子どもたちが生きる未来を明るくする」ことを目指している。価値ある時間を増やし、豊かな社会をつくる/環境負荷の軽減と再生に取り組み、持続可能な社会をつくる/子どもたちが必要な支援を受けられる社会をつくる、ことに取り組んでいる。

具体的には、経理業務を自動化し、データを活用して事業価値を向上する“invox”の6つのサービスを提供している。

上記スライド左側のサービス群は他社にも見られる。しかし右側のinvoxコスト分析、invox炭素会計は、蓄積したデータを活用して事業価値を高める当社ならではのユニークなサービスだ。自社の業務に合うシステムを選定したい/導入・運用の手間をなるべく減らしたい/コストとリスクを最小化したい、といったニーズに応えられるのがinvoxなのだ。

メイン商品のinvox受取請求書は2023年の導入社数実績No.1(富士キメラ総研調べ)。(1)請求書の取り込み⇒(2)99.9%以上の精度でデータ化⇒(3)データ化の結果を確認⇒(4)会計ソフト・銀行・ERPに連携、という流れだ。(1)(2)(4)は自動化されている((1)は顧客がスキャンする選択肢もあり)。

導入3カ月後の効果として、作業時間約80%削減、コスト約50%削減、という実績データがある。請求書の保管・参照が楽になった、電子での受領が進んだ、法改正の対応がしっかり行えた、という声も寄せられている。※利用デモンストレーション動画あり

料金プランは業界最安水準で、月額基本料金はミニマム(税込み1078円)/ベーシック(1万780円)/プロフェッショナル(3万2780円)の3メニューがある。2サービス分の月額基本料金で5サービスを利用いただけるなど、お得なパック料金も設定しており、invoxシリーズ累計で3万社以上に利用いただいている。

inboxコスト分析サービスについて。間接費は一般的に総コストの10~30%に相当するが、直接費と違い仕様の見直しや価格交渉が行われにくく、ブラックボックスで割高になっているケースが多く存在する。invoxコスト分析サービスでは、間接費を中心に「手間なし」「リスクなし」でコストを最適化し、収益力の強化を実現する。

ちなみにデータの収集等の作業は不要で、初期費用や調査料等もかからない完全成功報酬制だ。従来のコスト削減分析サービスは、サービス提供側に費用の持ち出しリスクがあるため、大きな削減が期待できる企業に限定したサービスとして存在していた。しかしinvoxコスト分析は情報収集の手間をなくし分析を自動化することで、多くの事業者が気軽に利用できるサービスとなっている。

コスト最適化による利益改善は、売上増加による利益改善より確実性が高い。間接コストの削減はコントロールしやすく、不確実性が低いためコスト最適化は利益改善にダイレクトにつながる。仮に営業利益5%なら、500万円のコスト削減は1億円の売上増加以上に営業利益に効くのだ。

製造業のオーデリック(株)は、invox受取請求書のデータを活用し、データ収集の手間なく電気料を5.3%削減した。同社初の経理部主導でのコスト削減施策への取り組みであり、持続可能なコスト管理体制の構築を目指している。

invox炭素会計は、経理業務を自動化し蓄積したデータを活用して、最適なCO2排出量の算定をサポートする。算定式は、CO2排出量=活動量(物量/金額)×活動ごとの排出係数(排出源単位)。

invox炭素会計は、網羅性が高く粒度の粗い会計データと網羅性は低く粒度の細かい請求データを組み合わせることで、目的に合わせた最適な工数・精度での算定を実現する。

冒頭に掲げたスライドのように、業務効率化はスタートライン。業務を自動化しデータを蓄積するために、また、データを蓄積し事業価値を向上するためにinvoxを活用いただければ幸いだ。

■特別講演(2)

AI時代の経理業務の可能性
デジタル化が変える税務対応と経理部門の未来

税理士
ミライコンサル株式会社 代表取締役
小島 孝子氏

神奈川県生まれ、税理士。ミライコンサル株式会社代表取締役。1999年早稲田大学社会科学部卒、2019年青山学院大学会計プロフェッション研究科修了。大学在学中から地元会計事務所に勤務した後、都内税理士法人、大手税理士受験対策校講師、一般経理職に従事したのち2010年に小島孝子税理士事務所を設立。税務や経理業務に関する執筆やセミナー講師の傍ら、街歩き、旅好きが高じて日本全国さまざまな地域にクライアントを持つ、自称、「旅する税理士」。

◎経理現場の変化/税務行政のデジタル化

ここ1~2年で、経理現場におけるAIの活用は急速に現実のものとなった。電子帳簿保存法の改正やインボイス導入などを背景に、経理・財務分野における精度の上がったAI関連システム導入率は近年急速に高まっている。

AI-OCRによる証憑処理の自動化/仕訳の自動化と勘定項目の提案/経費精算の高度化が進み、人間の作業内容は、AIが生成したデータの最終確認/例外的な取引への対応/予算実績分析/資金繰り予測など付加価値の高い分析業務、が中心になった。役割が作業者としての経理から管理者・分析者としての経理に変化し、経営判断への貢献度が高まってきたのだ。

AI導入に対してベテラン層は、雇用の不安/品質への不信感/スキルへの不安/現状維持バイアスを持つ。変化を乗り越えるための具体策としては、目的とメリットの明確な共有/ベテランの知見をAIに活かす/スモールスタートと成功体験の共有/伴走型の研修とサポート体制/新たな役割とキャリアパスの提示、が挙げられる。ベテランを含む全員がAI活用に前向きに取り組むための実践的アプローチが必要だ。

国税庁のDX戦略の全体像について。同庁は、納税者の利便性の向上(手続き負担軽減)/課税・徴収の効率化・高度化(適正・公平な課税の実現)/事業者のデジタル化促進(企業の生産性向上への貢献)を企図している。社会全体のDX推進に貢献することを目指しているのだ。

OECD(経済協力開発機構)は「税務行政3.0」を提唱している。納税者のシステムに溶け込む税務/リアルタイムでの課税関係の安定/官民のシステム連携。この国際的な流れは、もはや避けることのできない大きな変化。日本の経理部門もグローバルスタンダードに対応していく必要がある。

税務行政のデジタル化に対する経理部門の対応策を、以下のスライドにまとめた。

◎税務調査の変化/経理人材の未来像

国税庁は、AIやデータ分析技術を活用し、税務調査のアプローチを根本から変えている。その変化は「広く浅く」から「狭く深く」へのシフトとして表れている。

具体的には、AIによるリスク分析と対象選定の高度化/リモート調査の一般化と効率的な接触/会計システムの生データ分析が中心/データに基づく精度の高いターゲティング/「簡易な接触」による自主的是正の促進、である。これらの変化に対応するため、経理部門はデジタル化への対応とデータ管理体制の強化が急務となっている。

税務調査委対応におけるAI活用事例について。予防(守り)面では、AIによるリアルタイム不正・誤謬検知やAI-OCRと電子帳簿保存がある。対応(攻め)面では、AIによる税務リスク分析や、生成AIによる回答案作成が挙げられる。

AI時代に求められる経理人材像については、下記スライドを参照。AI・デジタルリテラシー/データ分析・活用能力/コミュニケーション能力/業務プロセス設計・管理能力は必須となるだろう。

記録・報告から分析・提案へ——。AI時代は経理という仕事の専門性が再定義される大きなチャンスだ。価値ある専門家としての心構え=探究心(新しいテクノロジーを学び続ける姿勢)/柔軟性(変化を恐れず適応する力)/コミュニケーション能力(データ分析結果を経営の言葉で伝える力)を持ちたい。AIはあくまでツールであり、その価値を最大化するのは人間の創造性と専門知識なのである。

2025年7月29日(火) 会場対面/オンラインLIVE配信でのハイブリッド開催

source : 文藝春秋 メディア事業局