大学が夏休みに入ると、沖縄へ行く。米軍基地を歩き、人と会い、書きかけの本に手を入れる。といっても、基地の中にはほとんど入らない。興味があるのは、フェンスの境界、地域と基地の接点である。片側には住宅や学校があり、もう一方には軍用車やヘリコプターが並ぶ。フェンス一枚を挟んで、まるで異世界だ。
基地の周りを歩いても、論文や本のネタにはならない。なればいいのだが、文字になるのは史料に語らせたものだけ。じゃあ、なぜ歩くのか。しかも日本中、たまに海外も。基地は好きだが、趣味といえるほど「好き!」ではない。改めて考えると謎だが、書くとき、話すときの言葉のリアリティを得るため、と周りには説明している。

今年はタイヨーゴルフクラブ(沖縄市)と奥間レスト・センター(国頭村)を訪ねた。どちらも、れっきとした米軍基地である。聞いたことのある読者はほとんどいないだろう。
タイヨーはゴルフ場だが、「カジノ」がある。日本人も利用している。奥間は米軍関係者のレクリエーション施設。米軍基地のフェンスのない浜辺が、隣接する日本のリゾートホテルまで続く。普天間や辺野古ばかりが、沖縄の基地ではない。
今年は旧盆と重なった。スーパーには供物の果物が山と積まれ、家族連れで賑わっていた。祖先を迎え、親族が集まる。懐かしい景色をみているようで、私はこの時期の沖縄が好きだ。沖縄は地縁や血縁の「横」のつながりが深い。同時に、先輩・後輩の「縦」のつながりも太い。旧盆の賑わいをみながら、誰かを代表に立てる場面でも、そういう関係が顔をのぞかせるのだろうかと、これまた賑わいをみせる県知事選を横目にみていた。
当選した古謝氏は42歳、沖縄県政史上最年少の知事だ。現地では「まだ若いよ」との声を聞いた。「若いから、こちらの言うことを聞くだろう」と下心をもつ人がいるとも聞いた。いろいろな角度から、すでに先輩風が吹いているようだった。古謝氏は六つの政党からの推薦を得た。それだけ借りを作ったということでもある。長幼の序を重んじる沖縄でのことだ。私ならとっくに胃に穴が空いている。
今回、「辺野古」はほとんど選挙の争点にならなかった。だが、現地へ行ってみて驚いた。土砂が海面を超えてうず高く積まれていたからだ。これまでは、海を横へ埋めていく工事にみえた。いまは埋めた土地の上に、さらに土砂が重ねられている。景色が上へ伸びていた。新たな基地は、海に作られるというより、海の上に作られる。計画図をみているだけでは、わからない。私が探している言葉のリアリティは、たとえばこういうことかもしれない。
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