インフラ競争で打倒GEに燃える
今年1月に日立製作所の中西宏明会長(72)が日本経団連会長に内定した時、多くの財界人は、「久しぶりに本格派の財界総理が誕生する」と期待した。9月3日に開かれた中西会長の記者会見は、そうした期待に応えたものだったといえるだろう。
「経団連が新卒採用の選考に関する指針を定め、日程を采配していることに違和感を覚える。こうした私の問題意識も踏まえて、経団連で議論する。日程のみではなく、採用選考活動のあり方から議論していく」
中西会長は堂々とこう語った。
新卒の採用を巡っては、榊原定征前会長時代に方針が二転三転し、企業も学生も混乱した経緯がある。中西発言は榊原時代を根底から覆すようなもの。なおかつ日本の独特な労働慣行の見直しに踏み込んだものでもあり、メディアが会見内容を大きく取り上げた。経団連がこれほど注目を集めたのは久しぶりのことだ。
同日夜の自民党会合で、安倍晋三首相は、「新卒の採用活動については6月開始というルールを作った。このルールをしっかり守っていただきたい」と、中西会長の言い分とは正反対とも受け取れる発言をした。
だが翌日、菅義偉官房長官が「首相発言は、2019年度までの採用活動のルールを守ってもらいたいという趣旨。中西会長は20年度以降の対応策について問題提起されたと認識している」と、両者の発言の整合性を取る気遣いを見せたため、中西会長の問題提起は、なおさら目立つことになった。
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source : 文藝春秋 2018年11月号