コロナ対応、五輪、解散から安保戦略見直しまで、厳しく問うた(聞き手・船橋洋一)
菅首相(左)と船橋氏(右)
「支持率の低下は厳粛に受け止めたい」
――今日はせっかくの機会ですので、あえて厳しい質問もすることで、菅総理の言葉をしっかり国民に届けたいと思っています。8月にマスコミ各社が報じた内閣支持率が、軒並み30パーセント前後と厳しい数字が出ていますが、どのようにご覧になっていますか。政府のコロナ対策についても「後手後手」「楽観的すぎる」などの批判の声も挙がっています。
菅 まず、支持率の低下は厳粛に受け止めたいと思っています。「後手後手」と言われますが、新型コロナというのは、未知のウイルスであり、なかなか全体像が見えませんでした。正解の見えない中、私自身は昼夜問わず、とにかく国民の命と暮らしを守ろうと、新型コロナ対策最優先で頑張ってきましたが、なかなか最終解決には至っておりません。
新型コロナのための対策は実に多くの方に大きな影響が及びます。ですから、理屈のないことはやるべきではないとの思いでやってきました。発生当時、私どもが手本にしようとした欧米各国は、ロックダウンによる対策をしていました。日本でロックダウンを行うことは法的に難しいですし、日本という国は「マスク着用を」と言えば、自然とみんな着用してくれる、そういう国ですよね。そんな国民性にも馴染まないとの思いがありました。その代わり緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などによって、全体を止めるのではなく、効果の高いところに絞って対策を講じてきました。しかし、約束の期限より緊急事態宣言を延長したり、あるいは解除してまたすぐに発令したりと、その繰り返しになってしまった。そういう意味で「後手後手」と批判されてしまうのはしっかり受け止めていかねばならないと私自身は思っています。
――もう一つの「楽観的すぎる」という批判については、どうでしょうか。
菅 世界各国がワクチン接種を進めることで感染を抑えており、わが国でも感染対策の決め手はワクチン接種だと思ったのです。本格的に接種が始まったのは、GWの連休明けくらいですよね。当時は、65歳以上の高齢者の重症化率が非常に高く死につながる状況でしたから、とにかく7月末までに1日も早く高齢者は2回の接種を終える、と必死になっていました。接種すれば感染も重症化も防げるわけですから。
そのために5月7日の時点で「1日100万回」という声を上げた。最初はみんなから「できるわけない」と批判されましたが、まずは一つの目標を掲げて進めていくことは、リーダーとして必要なことだと思っています。
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source : 文藝春秋 2021年10月号