故ジャニー喜多川氏の未成年男性への性的虐待疑惑が長い年月を経てようやく世界的に問題視されているように、男児の性被害は表沙汰になりにくい。だが、決して少なくないのだ。中学時代を通して、男性教師から性暴力を受けていた栗栖英俊さん(46)。被害から30年以上が経ったが、2022年、加害教師を相手取って裁判を起こし勝訴した。栗栖さんは勝訴後、「実名告発」によって同様の被害に苦しんでいる人たちにメッセージを投げかけている。性暴力の実情を長年取材するジャーナリストの秋山千佳氏が徹底取材した。(連載第2回・後編、前編はこちら)
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加害教師は定年後、充実した日々を送っていた
コロナ禍の2020年11月、栗栖は「毎日充実してます」というタイトルのメールを受け取った。差出人は、中学時代に学年主任だった男性元教師。栗栖が中1だった時に「村越先生に股間を触られる」と相談し、「あの先生がそんなことをするわけがない」と取り合わなかった人物だ。
メールからは、定年退職後も村越と親しくしている様子が伺える。
「先月30、31日と村越先生、◯◯先生とともにgo-toトラベルを利用して佐渡まで行ってきました。新潟までは往復車で、佐渡ではレンタカーで。さすが、年だね。疲れました。今週27日には銚子まで行って銚子電鉄に乗ってくる予定です」
栗栖は目を疑った。アクティブに遊んでいる様子の村越は、この2年前の2018年、栗栖が近況を探るために送った手紙にこんな返信メールをよこしていたのだ。
「心身共に病気で、すでに三年前から働くことが出来なくなっています。心は鬱病です。身体はいくつも病気で、一番重症なのは糖尿病です。いつ脳梗塞、心筋梗塞で倒れるかも、という数値で入院をすすめられています。もう誰とも会っていません。電話も出ることが出来ません」
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