「能力」と「素行」

日本人へ 第241回

塩野 七生 作家・在イタリア
ライフ 政治 歴史
 

 帰国直後から腰を痛めてしまい、三年ぶりの帰国というのに滞在先のホテルの部屋が病室と化した六カ月。十八世紀のヴェネツィアの貴婦人のようなコルセットを着けての毎日だから、結局はテレビを観ることになる。国会での質疑応答まで観たのだから、暇だけはあったのだ。

 以下に述べるのは、それへの感想。これも三年ぶりなので顔ぶれには変化はあったが、与野党の別なく男女の差もなく、政治家とは次の三種に分れることだけは変わっていなかった。

 第一種――お人良しではあるらしいが、政治面でのセンスとなるとゼロの人。

 第二種――人はワルでも政治センスならばある人。

 第三種――人柄もワル度でも月並をいってはいるのだが、彼らの最大の関心事は、次の選挙での自分の議席の保持にしかないこと。

 では、これら選良たちを数で分けると、圧倒的に多いのが第三種。次にくるのが第一種で、最も少ないのは第二種。

 どうしてこういう結果になるのかだが、次の首相を選ぶ第一党の総裁選挙から地方自治体の議員を選ぶ選挙のすべてにわたって、日本の有権者とは男でも、女の視点に立って選んでいるからではないかと思う。なぜなら、亭主にするのに最も適しているのが第一種だからで、つまりは、操縦しやすいと思わせるタイプ。国政の最高責任を負わねばならない首相を支持する理由の上位に、人柄が良さそうだから、をあげるのが日本なのだ。

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source : 文藝春秋 2023年10月号

genre : ライフ 政治 歴史