受賞のことば 九段理江
2002年秋、霞が関ビルの宴会場に、「優秀な作文を書いた埼玉県の6年生」のひとりとして、私はいた。ご馳走を食べさせてもらいながら、「この中に将来の芥川賞作家がいるかも」と、毎年子供のサインを集めて回っているおじさんの手帳に、私も名前を書いた。
埼玉に帰るバスの中で、大人が子供たちにマイクを渡し、順番に将来の夢を言わせた。「無理して『小説家』って言わなくていいからね」との前振りで始まったこの余興に、無理をする子供はひとりもいないまま、最後にマイクを渡された。
小説家になりたいなんて思ったことはなかったのに、ひとたび口にしたらきっと何かとんでもないことが起こる予感もしていたのに、その状況で私はそれを言わないわけにはいかなかった。予感は当たった。
〈略歴〉
1990年埼玉県浦和市(現さいたま市)生まれ。2021年「悪い音楽」で第126回文學界新人賞を受賞しデビュー。
受賞者インタビュー 九段理江
小説家になろうと思ったことはないんです
——受賞翌日のインタビューになりますが、昨日の今頃(15時)は、どう過ごされていましたか。
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source : 文藝春秋 2024年3月号