第168回芥川賞受賞者インタビュー 井戸川射子「『羅生門』は授業で必ず教えてきた」

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「言葉を上手に使いたい」。国語の先生は詩人で作家

受賞のことば 井戸川射子

 言葉を、すごく上手に使いたい、流れていき楽しい、固定でき楽しい、言葉は忘れないでいようとする祈り、より合わす縄、借りて返し馴染んでいく布、素晴らしく長い距離を飛ぶことのできる、それ同士でぶつかり渡りと繁殖を続ける鳥、生まれてずっと真上から降り注いできた明かり、みんなの痕跡、私のことなど置いてどこか行ってしまう、誰かを守る丈夫な膜、吐き出しても体に少しは残るだろう、きっとどこかで生き延びるだろう、私の体は言葉ではない、あなたも言葉ではない、でも今たとえば私はあなたの前に、言葉として存在している、言葉は一緒になって笑ってはくれないが、私の中から出てくる、自分の考えだけでパンパンの頭を通過する、あなたの前に、言葉として登場できて嬉しい、何か言って、上手に伝われば楽しい。

〈略歴〉

1987年生まれ。第一詩集『する、されるユートピア』で2019年に中原中也賞。高校に国語科教員として勤務。

井戸川射子さん ©文藝春秋

——高校で国語の先生をされていることが話題になっています。生徒には小説を書いていることを明かしていましたか?

 井戸川 言うと授業がやりにくいので、受験前で既に授業が終わっている3年生にだけ、芥川賞の候補になった段階で伝えました。

——受賞会見も今回もスタイリッシュなファッションです。失礼ですが日本のブランドですか?

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source : 文藝春秋 2023年3月号

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