オンラインで強い絆は作れない
中野 最近は日本、アメリカでも劇場型ともいえる選挙がありました。どうご覧になりましたか?
川村 SNSが大きな影響力を持ったり、候補者の発言が注目されたり。それが如実に表れましたね。
中野 アメリカ大統領選で返り咲きを決めたドナルド・トランプ氏は、私は必ずしも支持というわけではないのですが、“魔術的”な言葉の使い手であるとは思いました。1日前とまったく違う内容をXでポストして、「あの発言は何だったの?」となることもしばしばありますし、ロジックが滅茶苦茶であることも多い。それでも今回、大勝と言って良い支持を集めたことを、興味深く感じました。
川村 結果的に、かなりの大差がつきましたね。
中野 激戦7州で全勝と、なぜあそこまで支持者が増えたのか。個人的に注目していたのは、トランプ氏が絶対にと言って良いほど難しい単語や言い回しは使わない点です。いつも平易な言葉で、短く、結論がわかりやすい。なので、どの層にも届く。これはインテリ層からは批難されるポイントにもなっているのですが、私には彼が類まれな言葉の使い手であると映りました。そこは対抗馬との大きな違いでもありました。
川村 次に何を言うのかわからないことが効果的なのだと思います。Aの次にB、Bの次にCが来ることがわかっている人の話を、面白がっては聞けない。Aの後にマグロの話が展開され、次に土星の話題が出てくる。唐突さに戸惑いつつも、ついついその話術に、多くの人が惹きつけられてしまう。
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source : 文藝春秋 2025年1月号