陛下はお酒、雅子さまは生き物が大好き。ご出産秘話から御所の中の私生活まで……新天皇・皇后おふたりに接した人々が素顔を明かす。
陛下とは幼稚園から同じクラスでした。背の順だったか、名前の順だったか、並ぶと陛下の後ろがいつも私。「なるちゃん」「しんちゃん」と呼び合っていて、新聞や雑誌の記事の写真には必ず陛下の後ろに私が写っていたものです。
20代の半ば頃、学習院時代の友人と参加したある会合でヒゲの殿下(三笠宮寛仁親王)とお会いしました。殿下はざっくばらんな方でしたからべらんめえ調で「わかってんのか、彼をいかすも殺すもおめえら次第だぞ。おめえらがやらないで誰がやるんだ」とおっしゃった。陛下を社会人として一人前にするのはお前たち同級生だよ、ということです。たしかに、同じような年齢で世の中のことについて申し上げられるのは同級生しかいない。それを「友情」というのかわかりませんが、あの言葉は心に沁みました。
当時の職場近くの小料理屋に陛下をお連れしたこともあります。特別扱いはお嫌だろうと思い、店にはお連れすることを伝えませんでした。「おやじ、いつも通りで」なんて言いながら5-6人で奥の座敷に向うと、おやじが「ん!? 今、誰通った?」と目をまるくしていました。
ビール、日本酒を飲みながら楽しい時間を過ごしてお開きになると、ほろ酔いの陛下が突然「歩いて帰りたいです」とおっしゃった。外にはもちろんSPと車が待っていますが、われわれが「お付き合いしますよ、一緒に帰りましょう」と言うと嬉しそうでした。店を出て陛下を囲むように歩いていると、すれ違う人がみんな振り返っていましたね。御所の入口で「じゃあ」とお別れしました。
お酒の余韻にひたって歩くというのは陛下にとってめったにない時間だったのだと思います。お別れしたあと、しまった、もしかして2軒目に行きたかったのかも、とも思いましたが(笑)。
お猪口でお酌を受ける陛下。中央は立花氏
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source : 文藝春秋 2019年11月号