篠田正浩、徳岡孝夫、佐藤栄佐久、上田秀人、芦屋小雁

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偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム

★篠田正浩

篠田正浩氏 Ⓒ文藝春秋

 映画監督の篠田正浩(しのだまさひろ)は、少年の日に体験した敗戦の意味を問い続け、多くの作品でその答えを探求した。

 最後に取り組んだのが2003(平成15)年公開の『スパイ・ゾルゲ』だった。それまで日本の美や情念を追求してきた篠田が、一転して政治事件に取り組んだと驚いた人もいたが、この作品も少年の日に抱いた疑問への答えといえた。「日本とはどのような国なのか。それを最も真剣に探ったのが、スパイであるゾルゲなのではないのか」。

 1931(昭和6)年、岐阜市に生まれる。父は伯父と電機工場を経営していた。子供の頃から映画が好きで、地元の高校を卒業すると早稲田大学文学部文学科に進んだが、体を鍛えようと体育会系の競走部にはいり、大学駅伝で注目されるようになる。

 しかし、映画への憧れは変わらず、倍率何百倍もの松竹の入社試験に合格。助監督時代には体力もあったが理論もよく知っていて、小津安二郎監督が作品の試写前に「篠田はおるか。観終わったら意見をいえ」と言ってくれたのを生涯の誇りとした。

 最初の監督作品は60年の『恋の片道切符』で若いミュージシャンたちの闘いを描く。同年の『乾いた湖』では無名だった寺山修司に台本を書かせ前衛音楽家の武満徹を採用し注目される。64年、石原慎太郎原作の『乾いた花』は斬新な手法のためお蔵になりかけたが、石原が日生劇場で試写会を催し、高い評価を得て初期の代表作となる。

 同年、司馬遼太郎の『幕末』を基にした『暗殺』の打ち上げで、女優の岩下志麻と飲みにでかける。そのさいダンスをしたが、岩下に「私あなたと結婚するような予感がするわ」といわれて「追い詰められた気持ちになる」。

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source : 文藝春秋 2025年6月号

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