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米国の「ささやかな幸せと前進」ブーム

 近藤が代表する「日本のソフトなマインドフルネス」コンテンツは、今こそアメリカで需要が高いかもしれない。ここ数年、アメリカのポップカルチャーでは「ささやかな幸せと前進」ブームが起きているためだ。

米人気番組「クィア・アイ」


 たとえば『KonMari』はリアリティ番組『クィア・アイ』やアリアナ・グランデのヒット曲『thank u,next』と比較されることが多かったのだが、これらヒット作はすべて個人が前進する方法をポジティブに提供している。

世界が不安定だからこそ「管理できる幸せ」に需要

 こうしたセラピー的な自己最適化トレンドの背景には、SNSによる個人志向の促進、さらには政治や気候問題による社会への不安増加があると見られている。言い換えれば、国家や社会への不信が増大するトランプ政権期のアメリカでは、パーソナルな領域の幸福や前進、そして安心を提供するポップカルチャーが流行しているのだ。

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 前述した『テラスハウス』のヒットにしても、この流れを汲めばわかりやすいかもしれない。「悲しいニュースに溢れた2018年、この番組の善なる若者たちのストーリーは希望ののろしだった」……そんな文で締めくくられたTIMEの『テラスハウス』レビューは、アメリカの「不安な世界におけるささやかな幸せ」ブームと「日本のソフトなマインドフルネス」コンテンツの相性の良さを表しているようだ。そもそも、政治や社会に期待せず自己充足を極めんとする精神や文化は、アメリカより日本のほうが成熟しているのかもしれない。

「大きな不安には家の掃除を」

 こんまりメソッドがアメリカの「ささやかな幸せと前進」ブームにフィットすることは、近藤自身の発言を見ても歴然だろう。米メディアEsquireから「去年は多くの人にとって荒廃した年だったが2019年はどうすれば良いか」と問われた近藤は「大きな不安を感じるのなら家の掃除を勧める」と助言している。

近藤麻理恵 ©Getty Images

 彼女によれば、家のスペースは自分自身がコントロールできる場所だ。人は、家の片づけを通して幸福や安心を感じる環境を自ら作ることができる。ゆえに、掃除は人生において重要なのだと……こうした語り口を聞くと、スピリチュアルや日本のイメージなど関係なく近藤が能力の高い人物だと伝わってくるし、これを読んだあなたも掃除をしたくなったのではないだろうか。