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 本当にこんなことをやっていて日本企業は持続していけるのだろうか。そろそろ日本の雇用制度を見直す時期に来ているのではないかと考えるのは私だけではないはずだ。これまでのサラリーマンは22歳で集団就職(学卒一括雇用をこう呼んでもよいのではないか)して、60歳までの38年間、ふつうは同じ会社に勤めてきた。これが65歳になれば43年間、70歳まで働かざるを得なくなれば、都合48年間、なんと50年近くも同じ会社で、同じように働くことが本当に可能なのかということになる。

サラリーマンも「強制換羽」される時代

「強制換羽」という言葉をご存知だろうか。養鶏業では、多くの雌鶏を養っている。雌鶏は産卵開始後10か月程度たつと、次第に卵を産む回数が少なくなり卵の質も悪くなると言われる。そこで多くの養鶏場で行われているのが「強制換羽」だ。これは卵を産まなくなった雌鶏に対して10日から2週間程度絶食、ないしは栄養価の低い餌しか与えなくする飼育法だ。餌を与えられない雌鶏は衰弱して羽が抜ける。

 絶食を経たうえで新たに餌を与え始めると、必死に生を求める雌鶏は元気を取り戻し、再び卵を産むようになるのだ。この手法を施せば、一度は生産性が落ちた雌鶏に再び卵を産ませて収益を得ることが可能となる。養鶏場にとってはまさに「生産性の向上」だ。また絶食中は餌代もかからない。雛から卵を産む雌鶏になるまではコストも時間もかかる。この手法を用いれば「コスト削減」も実現できる。

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 実際、45歳以上をターゲットとした早期退職者を募る企業が増えている。昨年6月にはNECが3000人規模の早期退職希望者を募り、2170人の応募があった(昨年11月時点)。今年に入ってからはカシオ計算機や富士通、コカコーラボトラーズジャパンホールディングスなど大手企業が早期退職希望者を募り、相次いで経営の立て直しをはかろうとしている。

©getty

 嫌な話だが、日本のサラリーマンにも強制換羽が必要な時代が来るかもしれない。実際にこうした雇用制度は多くの副作用を社会にもたらすだろう。特に40代後半で定年になったサラリーマンには次のステージに行けない者が出るだろう。子どもがいれば教育費が一番かかる世代でもある。養鶏場でも強制換羽を行うと少なくない雌鶏が飢え死にするという。

 ただ、会社は高齢者雇用が必要なくなれば、若い世代に多くの報酬を支給できるだろうし、重要な役職を早くから与えることができるようになる。国際競争力もアップするに違いない。社員の生産性も上がるだろう。