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「お酒を飲んでも、帰ってくるのが皇居なので……」

――ちなみに……つかぬことを伺いますが、若手皇宮護衛官が暮らす寮ってまさか皇居の中にあるんですか?

青木さん そうですよ。最初住所を書くときにちょっと感動しました。でも、だからこそ普段から皇宮護衛官であるという意識をするようになるんです。休日にはもちろん外に出て友人とお酒を飲むこともあるのですが、帰ってくる先が皇居じゃないですか。そうなると見ている人もいるわけで、「あの人フラフラに酔ってるけど皇居に入っていっていいの?」と思われるわけにはいかない。仕事中は常に気を張っているのでメリハリは大事にしていますが、それでも自分が皇宮護衛官であるという意識は絶えず忘れないようにしています。

――まだ若手としてこれから高みを目指していくのだと思いますが、若手の立場として皇宮警察のおもしろさはどこにあると考えられますか。

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青木さん いろいろなことに挑戦できることですね。馬に乗ったり白バイや側車とかもあるし、スキーとかテニスとか。自分の好きなこと、得意なことを活かす可能性はたくさんあると思います。そしてまだまだ先にはなりますが、陛下のお近くでお守りする側衛はいずれ目指していきたい。まだまだ学ぶことだらけではありますが、今は門での勤務をしっかりやって、皇宮護衛官になったからには将来的には側衛をするというのは目標のひとつです。

皇宮警察は、今日も皇室を護っている

◆◆◆

 側衛とは、青木さんが言うように文字通り天皇陛下の最も近くでお護りするという責任重大な任務。ただ総理大臣のSPなどとは異なり、周囲を威圧するような護衛ではない。国民ひとりひとりに寄り添う陛下のお気持ちを踏まえ、存在しているかどうかもわからないほどの“黒子”として、そして同時に絶対に警戒を怠らないというバランス感覚が求められるのだという。今は門に立つ青木さんは、「陛下のお客さまもいらっしゃる一方で、厳しく警戒する姿勢も必要でバランスが難しい」と話す。国民とともにある皇室のイメージを、まさにそのままに日々の任務についているのが皇宮護衛官、ということなのだろう。

#3 天皇陛下の車列 選ばれし白バイ隊員しか運転できない“側車”とは へ続く

#1 皇居を24時間365日護衛――「皇宮警察」を知っていますか?
#4 東京のど真ん中 皇居でサラブレッドを乗りこなす騎馬集団

 

写真=佐貫直哉/文藝春秋