駅構内の施設としては不自然な「庭園展望台」だが……
この日、12000系の発表会が行われたかしわ台駅と、レール締結式が行われた羽沢横浜国大駅は大いに盛り上がった。一方、そのほかの駅は平常通りの静かな日を過ごしていた。この中のひとつ、いずみ野線の緑園都市駅に注目したい。相模鉄道の発展の象徴となる駅である。
緑園都市駅は、沿線の人々にとって「展望台のある駅」「庭園のある駅」として知られている。高架の複線の両側にホームがあり、上りホーム、下りホームとも、線路と反対側に展望台という名の庭園空間がある。ニュータウン開発のイメージアップか、「緑園都市」という駅名にするために庭園を造ったか。どちらも半分あたりで、半分ハズレ。そもそも展望台というくせに、目隠しの壁が建てられて、景色が見えない場所もある。
駅構内の施設としては不自然なこの「庭園展望台」は、本当は待避線を作るための空間だ。壁とホームの位置関係を見てほしい。ここに線路を敷けば、各駅停車がこちらに進入して停車できる。そして現在の線路があるところは急行や特急が停車または通過する。
つまり、緑園都市駅は、各駅停車を優等列車が追い越せる構造として作られた。しかし、当面は増発もなく、追い越しが必要なダイヤにならないため庭園にすることになった。いまのところ、線路に作り替える予定はない。JR東日本との直通運転が始まったとしても、当分はこのままだという。
相鉄利用者の約7万人が直通線に
相鉄の都心直通運転は、2000年に運輸大臣の諮問機関「運輸政策審議会」が東京圏に必要な路線として答申した「神奈川東部方面線」を元にしている。相鉄は横浜と海老名を結ぶ本線と、その途中の二俣川と湘南台を結ぶいずみ野線を運行しており、多くの通勤通学客は横浜へ向かっていた。関東の大手私鉄のうち、都心方面への他社直通運転を行っていないのは相鉄のみだった。
都心直通運転は、本線の途中の西谷から分岐して羽沢横浜国大駅を結ぶ線路を使う。そうなると、いままで横浜まで乗ってくれた人々が、途中駅までしか乗らない。すなわち運賃収入が減るわけで、相鉄にとっては嬉しくないはず。相鉄は横浜まで来ていた利用者のうち、約7万人が直通線に移るとみている。
しかし、相鉄は直通運転に大きな期待を持っている。既存の通勤客の変化による減収より、都心直通によって沿線人口が増え、乗客も増えると考えているからだ。約7万人の利用距離が縮まっても、それ以上の通勤通学客が増えた方がメリットは大きい。
「東京で勤務する人々にとって、相鉄沿線は住む選択肢になった」(相鉄)
ゼロからのスタートだ。増える未来しかない。