「これは絶対に炎上する」と津田氏に忠告した
今回の事態を引き起こした最大の原因は、「脅迫」という卑劣な犯罪行為でしょう。批判を集中させるべきなのはここであるはずです。
実は、今回の「平和の少女像」など一部の展示物について、私は事前に知る機会がありました。とあるところで、今回の芸術祭で芸術監督を務める津田大介さんとお話をする機会があったからです。
津田さんも、予想される反応をある程度把握されていたように思います。そのとき私からも「これは絶対に炎上するし、役所も折れるかもしれない」と話をしたように記憶します。
いまや、ネット上には炎上対象を“攻撃”するためのマニュアルが存在しています。今回の電話での攻勢のように、クレームをどういう手法で伝えれば最も効果的なのか、ある種の「知見」が積み上がっているのです。
とはいえ、残念ながら、今回は想像を超える事態になってしまいました。京都アニメーションの放火事件が起こった直後に、「ガソリンを撒くぞ」とほのめかされたわけですから。批判と脅迫はまったく別物です。これまで完全に想定せよとなれば、ほとんどの表現活動ができなくなってしまいます。
それでも、与党の政治家からも「表現の自由は守る」「必要な手段は講じる」「脅迫には屈しない」などと強いメッセージが発信されれば、ここまで早期に中止とはならなかったかもしれません。しかし、現実はそうした発言は少なく、あってもたいへん弱々しいものでした。日本社会の成熟度は、遺憾ながらその程度ということなのでしょう。今後、芸術祭以外のさまざまなイベントに波及は必至です。
今回「芸術と政治」の関係が問題になりましたが、そもそもこの二つは非常に近い関係にあります。