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反科学の人々が求めるのは「信頼」と「共感」か
「反科学」デマを追う『ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から』の著者・三井誠氏は、「科学コミュニケーション」の重要性を説く。かつて紀元前に地球球体説を説いたアリストテレスは、演説に大切な三要素として「ロゴス(論理)」「エトス(信頼)」「パトス(共感)」を挙げた。人々を説得する際、エビデンスや事実だけでは十分ではない。三井氏は、近代科学を広める人々が「論理」に頼りすぎて「信頼」と「共感」のコミュニケーションに失敗した可能性を指摘している。結局のところ、「反科学」旋風の対策は、専門家がインターネット等で知識を魅力的に伝えることなのかもしれない。
地球平面説の実証に取り組むフラット・アーサーたちは魅力的な発信を成し遂げている。彼らの活動場所はインターネットだけではない。
2018年には、60代のフラット・アーサーが独学によってロケットを開発し、カリフォルニアの上空570メートルほど飛んだところで不時着して救急隊に運ばれている。『ビハインド・ザ・カーブ』では、フラット・アーサーたちが「地球平面説」を証明するために手の込んだ実験をおこなうことによって、逆に「球体説」を立証してしまう悲劇も映された。
皮肉なのは、熱心に仮説を証明しようとするその光景にこそ、彼らが忌み嫌う科学の魅力が詰まっているところだろうか。