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社内ドキュメント、その5つの目的とは

 なぜ、多くの場面でそのようなメモを作成し、議論するプロセスをアマゾンは取り入れているのか、それには目的がある。

(1)効率化:事前に全員がドキュメントを読んで必要な情報を得ることにより、すぐにディスカッションを開始することができる。ミーティングの時間短縮にもなり、より良い結論が出ることになる。

(2)質の高い質問とディスカッション:全員が同じ情報を持つことにより、質問の内容が深くなるし、示唆に富んだものになり、ディスカッションがより的確なものになる。

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(3)場の公平性:社内で目立つのは声が大きくて積極的な人であったり、ダイナミックなスライドを使用する場合が多い。メモであれば、全ての参加者が公平に自分の考えを説明することができ、そのアイデアや戦略が理解しやすい。

(4)戦略的な思考:メモを書くことによって、メンバーがデータや事実に基づいて考えることができる。パワーポイントは、表面的な事実、基本的なデータどまりになってしまうことが多いが、メモであれば深く細かい内容の説明が可能で、ナラティブ、ストーリーによって結論まで到達することができる。

(5)過去のアイデアや決定事項の記録:ミーティングを欠席せざるを得なかったメンバーに対してもこのメモで内容を説明することができて、置いてけぼりになることはない。決定事項の背景などについて、将来的に再度、確認する時にはメモが活用できるし、そのために検索可能なように保存する。

 ただし、実際には大量のドキュメントが整理されて活用しやすく保存されているとは言いがたく、同じようなドキュメントを何度も作ってしまう無駄があることもある。

©iStock.com

ジェフ・ベゾスが要求する文章力の高いハードル

 ジェフ・ベゾスがワードで作成された文章による社内ドキュメントを求めるのは、ドキュメント内容の本質をわかりやすく提示して、会議の参加者やドキュメント閲覧者からより具体的で意義ある質問やフィードバックを引き出すためだ。6ページャーのドキュメントについて、ベゾス自身が語った言葉がある。原文とともに紹介しておこう。

Full Sentences are harder to write. They have verbs. The Paragraphs have topic sentences. There is no way to write a six-page, narratively structured memo and not have clear thinking

 文章を書くのは難しい。それぞれの文中には(適切な)動詞があり、それぞれの段落にはトピックがある。明確でクリアな思考がないとストーリーとして構築された6ページャーのメモを書くことは不可能だ。

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星 健一 (ほし けんいち) 1967年横浜生まれ。1989年に縫製機器、産業装置メーカーであるJUKI株式会社に入社し、2005年まで旧ソ連から始まり、インド、シンガポール、フランス、ルーマニアと一貫して海外でキャリアを磨く。フランス、ルーマニアではそれぞれ現地法人の社長を務め、企業再生の失敗も経験。2005年に金型標準部品などの商社である株式会社ミスミに入社し、タイ法人の社長を務める。これらの海外でのトップとしての経験が現在の経営的視点の礎となる。2008年にアマゾンジャパンに入社。1年半後、ディレクター、リーダーシップチームメンバーに昇進後は、ハードライン事業本部、セラーサービス事業本部、アマゾンビジネス事業本部の事業本部長を歴任し、創世期から成長期の経営層として活躍。2018年、アマゾン退社後は、その経験を基に日本の会社に貢献すべく、セミナー講師、コンサルティングを手掛ける。

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扶桑社

2019年11月2日 発売